2011 Fiscal Year Annual Research Report
施設内虐待・暴力への包括的対応に関する臨床心理学的研究
Project/Area Number |
21530732
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
田嶌 誠一 九州大学, 大学院・人間環境学研究院, 教授 (70163459)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
飯嶋 秀治 九州大学, 大学院・人間環境学研究院, 准教授 (60452728)
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Keywords | 心理学的介入 / 児童養護施設 / 虐待・暴力 / 安全委員会 |
Research Abstract |
平成23年度は、平成21年度及び22年度までに実践してきた、二レベル3種類の施設内虐待・暴力に包括的に対応するための安全委員会方式を6自治体12施設で引き続き実施した。しかしながら、安全委員会方式は、平成17年に創案され、最初に導入した施設では既に5年もの実績を持っているため、同じく安全委員会方式を導入した施設にも、5年もの実践をしてきた施設と、後から緊急対応を契機に導入した施設までの幅を持つことになってきた。後者での経験は、それらを通過した前者の諸施設に類似した経過を取るため、ある程度は予想の範囲内にあったが、前者の経験はまだ少数の施設でしか経験していないながらも、今後どの施設も直面するであろう課題を持っていた。それが、安全委員会方式で暴力が落ち着いた施設で、安全委員会方式をいかに維持してゆくのかという課題であった。 そこで、平成21年度から開催してきた児童福祉施設安全委員会全国大会において、実践事例を毎年紹介し、その中に、新規導入施設から、古参施設までの実践報告をしてもらうことで、前者には後者から展望をもってもらい、後者からは前者の導入時の緊張感を学び合う仕組みを維持していった。その中で具体的に出てきた工夫とは、(1)聞き取りの時間を積極的な労いの時間にもする、(2)夕食や土日の週末に全員を集め定期的に暴力についての話をする、(3)毎年安全委員会設立日に記念式典を行い、さらにはそこで良くやってきたキーパーソン児童を労う機会を設ける、(4)全国大会に複数の異なった職員に出席してもらい、施設内で維持・発展がしやすいように工夫する、などの知見を得た。 平成22年までに出てきたこうした知見は、これまで児童福祉施設で多くの施設が待望しながら具体的に出来ずにきたことであり、当初から我々の取り組みは、全国約3万人の児童を視野に入れた活動であったため、これを『児童福祉施設における暴力問題の理解と対応』という著書の形にして、全国の児童福祉施設で、条件と決意さえあればこの問題に取り組めることを具体的に示した。
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