2009 Fiscal Year Annual Research Report
能動的観察が視覚情報処理の時間的特性に及ぼす効果についての心理物理学的検討
Project/Area Number |
21530760
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
一川 誠 Chiba University, 文学部, 准教授 (10294654)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
櫻井 建成 千葉大学, 大学院・理学研究科, 准教授 (60353322)
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Keywords | 能動的観察 / 受動的観察 / フラッシュラグ効果 / コンピュータマウス / 知覚運動協応 / 時間的精度 / 知覚学習 / 注意 |
Research Abstract |
これまでの多くの実験的手法に基づく知覚や認知に関する心理学的研究においては,観察者が受動的に刺激の観察を行う状況で知覚認知情報処理過程の特性が検討されてきた.そのため,知覚情報処理と観察者の能動的行為との相互作用の過程やそれらの間の関係については十分に解明されていない.しかしながら,日常的な場面においては観察者は自ら行動することで能動的に知覚認知情報を獲得している.本研究では,観察者が能動的に操作を行う状況に関する諸要因が視覚をはじめとした知覚過程における時間的特性にどのような影響を及ぼすのかを心理物理学的実験によって検討している.21年度に実施した一連のフラッシュラグ効果や注意の知覚認知情報促進効果などについての実験的検討によって,観察者がコシピュータマウスを用いて能動的に刺激運動を操作する条件においては,視覚の時間的精度が上昇しうることを見出した.ただし,手の運動と刺激運動との対応関係に必然性がない条件や,刺激運動の操作に観察者が慣れていない道具を用いた条件では,能動的観察においても視覚の時間的精度の上昇は認められないことが示された.他方,視覚刺激と手の運動との方向さえ対応づけられていれば,手の運動の大きさによらず,能動的観察によって視覚の時間精度の上昇が確認された.さらに,視覚的注意に奥行空間中の異方性があることも見出した.これらの結果は,能動的観察における視覚の時間的精度の上昇は,能動的に操作される手の自己受容感覚と視覚的運動信号との間の方向的対応関係についての学習に依存することを示している.本来,手の運動と刺激運動との間には一義的対応関係はないが,これらの間の方向的対応関係についての学習が,知覚運動協応的処理を可能にし,手の運動信号によって視覚情報処理を促進することで能動的観察における時間的精度が上昇したものと考えられる.
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