2011 Fiscal Year Annual Research Report
感情音声を用いた声質認知メカニズムの検討と声質情報処理モデルの構築
Project/Area Number |
21530768
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Research Institution | Aoyama Gakuin University |
Principal Investigator |
重野 純 青山学院大学, 教育人間科学部, 教授 (20162589)
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Keywords | 声質の認知 / 音声マスキング / ランダムスプライシング / 声質情報処理 / 感情音声 |
Research Abstract |
感情音声があらわす感情の種類の違いによって、声質の同定や弁別が異なるという昨年度までの実験結果について、今年度はさらに実験と音声分析を行って検討した。昨年度までの研究から、感情音声は主にピッチの高さ変化によるところが大きいが、その変化の仕方によってどのような違いが生じるのかを明らかにする必要が認められた。そこで、ピッチの有する韻律情報を音声マスキングすることとし、ランダムスプライシングの手法を用いて実験を行った。手続きとしては、ピッチの動きをよく知っている母語(日本語)と母語ほどには習熟していない米語について、それぞれの言語を母語とする俳優が発声したものを用いて、音声を評価する7個の形容詞対に関して日本人被験者に評定してもらった。その結果、「落ち着きのある-落ち着きのない」判断は韻律情報がマスキングされたことにより評価の低下が認められた。一方、他の形容詞対については違いはほとんど認められなかった。また、性別および話者の年齢のような個人情報もあまり影響を受けなかった。以上の実験結果より、韻律情報は話者の印象を特定の側面において変化させるが、大部分において影響は小さいこと、したがって韻律情報は話者情報の一定部分の知覚にのみ貢献することが認められた。一方、音声分析に関しては、一部の感情音声について行った。当初、声質認知の情報処理モデルを構築することを目的としていたが、研究を進めるうちに検討しなくてはならない問題点が次々と明らかになり、完成には至らなかった。感情音声や声質の印象には様々な要素がからんでいるため、それらをさらに検討することが必要であることが分かった。本研究により声質の情報処理に関わるいくつかの重要な要因を明らかにすることができ、さらに今後検討すべき問題点も明らかにできたことは大変有意義であったと言える。
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