2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21530770
|
Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
梅田 聡 Keio University, 文学部, 准教授 (90317272)
|
Keywords | 認知神経科学 / 社会脳 / 情動 / 高次認知機能 / 自律神経活動 |
Research Abstract |
本研究の目的は,社会的情動を構成する要素である高次感情を司る認知神経メカニズムについて,詳細な実験的検討を行うことである.初年度に当たる平成21年度には,まず情動反応に伴う身体生理反応について詳しく検討するため,機能的MRIを用いた内受容感覚に関する検討を行った.また,心拍や発汗などの自律神経活動をモニターすることにより,他者の情動的な表情を認識する際,および情動的な文章を理解する際の身体反応についても詳しく調べた.その結果,自律神経の中枢部位と考えられている帯状回前部および島皮質などが深く関与すること,また前頭葉の下部が背景感情の生成に関与することなどが,機能的MRIの研究により明らかになった.さらに,自律神経の活動に関する詳細な分析からは,感情表出性が低い人ほど,情動的な文章を読解する際の身体反応が乏しいことなどが明らかになった.覚醒度の高さによって,情動表情を知覚する際の時間評価にも影響を及ぼすことも示された.これらの結果から,社会的情動の生起メカニズムを考慮する際には,身体情報の処理に注目する必要があることが明らかになった.これらの実験結果は,不安などの質問紙とも興味深い相関を示しており,2年度目以降の神経心理学的アプローチによる研究に重要な示唆を与えることとなった.本研究の成果は,基礎研究として有益な示唆を与えうると同時に,臨床場面や教育場面における実践的な参考資料となるものと考えられる.
|