2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21530771
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Research Institution | Sophia University |
Principal Investigator |
岡田 隆 Sophia University, 総合人間科学部, 教授 (00242082)
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Keywords | 長期増強 / メラトニン / 一酸化窒素 / 記憶 / 概目リズム |
Research Abstract |
記憶機能の日内変動(概日リズム)機構を明らかにするため、分泌が概日リズムを示すホルモンの代表例であるメラトニンと海馬シナプス可塑性との関係について、本年度は電気生理学的実験を中心に検討した。ラット脳スライス標本を作製し、シャファー側枝にテスト刺激を0.1Hzの頻度で与えつつ、テタヌス刺激(100Hz、1秒間)後の海馬CA1領域におけるシナプス応答の長期増強を記録した。その結果、(1) メラトニン(100nM)はテタヌス刺激誘導性の長期増強の大きさを減弱させた。また、この100倍濃度のメラトニンでもほぼ同程度の抑制となり、メラトニンは100nMの濃度で長期増強に最大の抑制効果をもたらすことを確認した。(2) 一酸化窒素合成阻害薬L-NAME存在下において長期増強の大きさの減弱が有意に見られ、この減弱効果は、別の一酸化窒素合成阻害薬L-NMMAを用いた場合にも同程度に観察された。したがって、今回の実験条件下では一酸化窒素信号系が長期増強の誘導に関与していることが示された。(3) メラトニンと一酸化窒素合成阻害薬を同時に投与した場合、減弱の程度はどちらか一方を投与した場合以上には大きくならなかった。つまり、両者の遮蔽効果がみられた。(4) 一酸化窒素のドナーDEA/NOを投与することにより、メラトニンとL-NAME存在下の長期増強の大きさは通常となった(生理溶液のみの存在下と同程度であった)。なお、DEA/NOのみの投与では、シナプス応答の大きさやテタヌス刺激後の長期増強の大きさの程度には影響がなかった。以上の結果より、メラトニンによる長期増強抑制効果は、一酸化窒素信号経路に作用して生じていることが明らかになった。
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