2010 Fiscal Year Annual Research Report
近代化転換の観点から見たソビエト教育史(1930年代)の実証研究
Project/Area Number |
21530783
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
所 伸一 北海道大学, 大学院・教育学研究院, 教授 (50133682)
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Keywords | ロシア / ソビエト / 教育史 / スターリン / ブロンスキー / クループスカヤ / 新教育 / 近代化 |
Research Abstract |
本研究計画の目的は、現地の図書館と公文書館で資料開拓を行うことにより、1930年代ロシアにおける労働学校理念・「新教育」の放棄の過程と「体系的」な教育課程・評価制度のソビエト的構築過程を解明すること、及び、そこにおける教育学者・児童学者・心理学者、パーヴェル・ブロンスキーの活動に関する新しい評価を行うこと、であった。 計画の第二年次研究で、12月に現地資料調査を実施(8日間)、以下の諸点を解明できた。 (1)ブロンスキーの従来判明していた1930-31年の心理学研究所とポリテフニズム教育研究所への入所の事実に加え、新たに1931年に民族教育学中央研究所児童学班への所属と民族児童の義務教育条件の調査およびそれに基づき彼が1932年論文でヴィゴツキー、ルリヤ等の民族啓蒙観を批判した事実、非ロシア民族地域においても全ソ連画一の教育課程導入に疑義を呈した事実。(2)教育人民委員部の下で統合された中央教育学研究所における1933-34年段階の授業論の議論ではいまだにトルストイ的な無政府的な学校論や十月革命以来の夢想を引きついだ「教師=生徒の同僚」論も位置を占めて、学校現場を教授法で支援するにはほど遠かった事実。(3)これに対して1932-35年のブロンスキーにあっては、ロシアの学界で影響を復活させていたヘルバルト的5段階論を批判しつつ、教科の特質を反映した授業の論理構造化、地域事情や子供の年齢特性を考慮した(児童学に基づく)指導法を提案しており、後に続く仮説をまとめつつあった。 以上に基づく第二年度の成果を北海道教育学会55回大会(2011年3月)で公表した。
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Research Products
(1 results)