2010 Fiscal Year Annual Research Report
バウハウスの工房における創造性教育の成功要因の解明
Project/Area Number |
21530799
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Research Institution | Wakayama University |
Principal Investigator |
長谷川 哲哉 和歌山大学, 教育学部, 教授 (50031810)
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Keywords | 教育学 / ミューズ教育 / バウハウス / 創造性 / 芸術大学改革 / W・グロピウス / J・イッテン / G・グルノウ |
Research Abstract |
本研究の目的は、ドイツ・ワイマール期の革新的な造形芸術学校バウハウスにおける創造性教育を成功させた諸種の要因を解明するにある。その中心的なものは、初代校長W・グロピウスと予備課程を担当した形態教師J・イッテンの教育観・教育方法である。昨年度は、この両者が世紀転換期の改革教育学運動から深甚な影響を受けたことを、彼ら独自の教育上及び芸術上の見解に関連付けつつ、実証した。 そこで本年度は、共感覚的音楽教育学を発展させ、後にイッテンからバウハウスへ唯一の女性形態教師として招聘され、しかもグロピウスに深甚な影響を与えたG・グルノウの理論と実践、そしてバウハウスにおけるその位置と役割を明らかにした。(なお併せて、バウハウスを改革モデルとした戦後ベルリン造形芸術大学第二代学長K・オットーのバウハウス観を調査し、その特質を明らかにした。) 彼女の根本理論は「いずれの色彩にも法則的な秩序、すなわち音調が対応する」という考えであった。色彩は形態と関連する。よって彼女の目標は「色彩と形態と音調による生ける形の構築」であり、これはグロピウスに、「音調と色彩と形態の統一的基礎の上に、個々人の物的特質と心的特質を平衡にもたらす」べき「調和化教育」という基礎教育の構想を生じさせた。 グルノウの活動は、改革教育学運動や表現主義運動の上にドイツ1920年代に展開したミューズ教育運動に属するものであった。なぜなら、ミューズ的なものとは、音楽や美術等<諸芸術を貫通する内的核心>であり、「内的運動感覚」(ゲッチュ)だからである。イッテンも「心魂的諸力の訓練」としてミューズ教育の重要性を主張した。 本研究全体の学術的な特色、独創的な点は、バウハウスに教育学が如何なる貢献をしたのか、その解明である。本年度も、かの<教育学から専門科学・芸術へ>の流れの基本部分を描き出すことができた。
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Research Products
(4 results)