2011 Fiscal Year Annual Research Report
総合的な学習を中心としたハイブリッド型教育の研究開発
Project/Area Number |
21530812
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
山住 勝広 関西大学, 文学部, 教授 (50243283)
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Keywords | ハイブリッド型教育 / 総合的な学習の時間 / 学校教育のイノベーション / 学習活動 / 教育実践 / 協働学習 / 教育方法学 / 活動理論 |
Research Abstract |
第1に、理論的側面として、学校と学校外の複数の異なる活動システムの相互作用、ネットワークとパートナーシップを新たにデザインするための枠組みとなる「活動理論(activity theory)」を応用し、子どもたちと教師、親、学校外のパートナーが協働する「ハイブリッド型教育」のモデル化に取り組んだ。そこでは、子どもたちと教師が学校外の生産者や専門家、コミュニティや組織とともに教科横断的・総合的な問題や課題を発見して学びのネットワークを築き、知識・技能を活用しつつ問題や課題を探究・解決してゆくような協働の学びを「ハイブリッド型教育」としてとらえ、学校におけるカリキュラム・授業・学習の拡張的な発展に寄与し得る、教育学の新しい概念としてそれを提起した。 第2に、実践開発の側面では、ハイブリッド型教育の実践開発について、大阪府吹田市の公立小学校2校と協力して進め、ビデオ、フィールドノーツ、子どものノートや作品、会議やインタビューなど、収集したデータの分析にもとづき、ハイブリッド型教育の実践的な意義と有効性を検証した。そこでは、地域における伝統野菜「吹田くわい」の再生と普及をテーマに、「種から食卓まで」と形容できるような、年間を通した総合的な学習の時間の継続的な実践を開発し、有機農業やエコロジー、食や調理、持続可能な生活について、子どもたちが地域の多様なパートナーと協働する探究的なプロジェクト学習を生み出していった。 以上を通して、総合的な学習を中心としたハイブリッド型教育の実践が、教科書や教室の閉ざされた壁を打ち破り、学校の外側に存在する多様な他者や異界といった社会的世界との出会いの経験を通して、子どもたちに社会と関わる積極的な「足場」をもたらすことが明らかになった。このことは、子どもたちが社会や他者との連帯的な行為を創り出し、それによって自己変成を遂げてゆくような学びの生成を、強力に示唆するものである。
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