2011 Fiscal Year Annual Research Report
戦後日本における学校誘致の社会力学―国立高等専門学校の新設と地元負担―
Project/Area Number |
21530823
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
大谷 奨 筑波大学, 人間系, 准教授 (70223857)
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Keywords | 学校制度 / 高等専門学校 / 高等教育 / 学校誘致 / 地元負担 / 国立学校 / 設置者負担主義 / 教育政策 |
Research Abstract |
本研究は、国立高等専門学校新設時において各地で展開された誘致運動とその内実、およびその結果としての箇所付けと開校までの経緯を分析することにより、誘致運動におけるメンタリティを考察しようとするものである。本年度は最終年度として、以下の作業を行った。(1)高知、徳島の地方紙を閲覧し、高知高専、徳島高専の設立過程を把握した。これによってすでに補足済みの新居浜・香川両高専を含んだ四国ブロックの検討をすることが可能となった。(2)二期校である鹿児島高専、三期校となった秋田高専の設立過程を補足した。これにより一~三期校までの箇所付け政治過程がほぼ明らかとなった。(3)高専が設置されなかった佐賀県の状況を地方紙を閲覧して把握した。その結果、佐賀、山梨、滋賀(2県は前年度に調査済み)といった国立高専が設置されなかった地域でも誘致の動きがあったことが明らかとなった。(4)上記を含め以下のように3年間の研究成果を日本教育制度学会おいて発表した。 1.概算要求→大蔵内示→復活折衝による開校数の確定→設置場所の当てはめ、という一期校決定までの行政過程がその後も踏襲されたこと。 2.この長いプロセスが誘致競争を過熱した結果、地元負担の問題の潜在化や最終判断に対する政治的配慮の介在を招いたこと。 3.地方は単に高等教育機関を求めたのではなく、国立高等教育機関の設置場所として認められることに意義を感じ誘致活動を行った側面があること。 4.その国立志向は高専増設後も、医大新設、新構想系大学設置にも引きつがれた可能性があること。
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