2011 Fiscal Year Annual Research Report
アメリカ合衆国の学術学会における女性研究者支援政策の研究:受容から積極的支援へ
Project/Area Number |
21530855
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Research Institution | Soka University |
Principal Investigator |
坂本 辰朗 創価大学, 教育学部・教育学科, 教授 (60153912)
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Keywords | 女性研究者 / アメリカ高等教育論 / ジェンダー / 教育政策 / 学術学会 |
Research Abstract |
本研究は、アメリカ教育研究学会(AERA)、アメリカ心理学会(APA)、アメリカ歴史学会(AHA)を対象に、1970年の初頭に学会内に設立された、女性の地位と役割に関する委員会(女性委員会と略記)が、どのようにして、女性研究者への積極的支援政策を生み出すに至ったのかを解明することを目的としている。本年度は研究の総括として、1980年代初頭までの期間を対象に、三学会の支援政策の比較分析をおこなった。 (1)女性研究者支援政策に関して、学術学会は理論的に、研究の主体としての女性(女性教育学者、女性歴史家等)を支援するだけでなく、研究の客体としての女性の研究(歴史学、心理学等における女性の研究)をも支援するという二重の機能を果たす可能性をもつ。前者については、三学術学会ともに、女性委員会が学会内で一定以上の認知を獲得するためには、当該学会の構造改革(会長を含む執行役員の選出方法や各種委員会委員の選出等)が前提であり、両者には一定の相関があった。APAでもっとも改革が進み、AHAが最後まで困難を抱えていた。後者については、三学会ともに決定的な成果を挙げた。 (2)学術学会は、その政策提言をつうじて、個別大学における女性研究者支援に対しても、一定の影響力を行使しうる可能性をもつ。これらは、研究対象となった三学術学会にとっても真であった。しかし、(a)個別大学の採用や昇進をめぐる性差別問題については、上記の女性委員会はほとんど無力であった。これは、当該の学術学会自体が、訴訟事件に関与することを一貫して避けてきたからであった。他方、(b)APAは大学(大学院)の心理学コースへのアクレディテーションをおこなっていたがゆえに、この過程をつうじて、影響力を行使することに成功した。 (3)三学会ともに、後のアメリカ高等教育に定着するようになる優れた幾つかのプラクティスーたとえば、学会年次大会における保育(AERA)、女性研究者データベース(AHA)など-を誕生させた。
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