2011 Fiscal Year Annual Research Report
イギリスにおける教職専門家自治組織のシステムと社会的役割に関する研究
Project/Area Number |
21530858
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Research Institution | Osaka Kyoiku University |
Principal Investigator |
冨田 福代 大阪教育大学, 教職教育研究センター, 教授 (40369591)
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Keywords | 教職専門性 / 専門家自治 / イギリスの教師教育 |
Research Abstract |
本研究の目的と主な内容は、2000年にイギリスで創設された教職の専門家自治組織であるGeneral Teaching Council (GTC)の役割や機能を明らかしにして存在意義を検証するとともに、そこにおける教職専門性の在り方や資質能力向上の方策を解明し、日本の文脈における専門家自治の可能性を探ることにある。調査では、イギリス4地域(イングランド、ウエールズ、北アイルランド、スコットランド)のGTCの文献調査を行い共通点と特徴を整理して、その結果を基に、最も規模が大きいイングランドと、最も歴史が古いスコットランドを中心に現地調査を行った。また、その過程で明らかになった、諸外国における同様の組織(teachingcouncil)の創設と国際的連携という新たな動向に注目し、研究対象にオーストラリアを追加した。さらに、日本の同様の組織と考えられる教育会の歴史と現状を文献および現地調査し、信濃教育会を事例に、GTCと日本の専門家自治組織の文化的歴史的違いを解明した。 医師会や弁護士会のような専門家自治組織を教職に求めた1966年ユネスコ勧告以来、同様の組織の創設を求める教員や地域の声にこたえて、行政主導で設立されたのがGTCである。これら組織に共通する主たる機能は、教員の登録と現職を中心とした職能向上における役割である。組織の方向を決めるカギとなった職域の自治の問題では、具体的な権限や機能がそれぞれの地域や時代、また分野においても異なり、その違いが国や地域における専門職としての在り方に直接反映されていると思われる。 また、研究期間中に発生した、イングランドGTCの廃止決定、スコットランドGTCの完全自治化政策、オーストラリアTCの強化整備、信濃教育会の法人化といった動向は、専門家自治組織の本質や存続に関わる問題であり、その経緯と結果、今後の方向の現実が上記の内容を裏付ける形となり、激変の過程を調査内容に組み込むことができたことで貴重な研究結果を得ることができた。
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