2011 Fiscal Year Annual Research Report
アメリカにおける産学官連携組織の形成過程と教育的機能
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21530863
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Research Institution | 南山大学短期大学部 |
Principal Investigator |
五島 敦子 南山大学短期大学部, 英語科, 教授 (50442223)
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Keywords | 産学官連携 / 高等教育 / 日米科学交流史 / アメリカ大学史 / WARF / Wisconsin Institutes for Discovery / ロックフェラー・フェロー / 大学開放 |
Research Abstract |
本年度は、(1)ウィスコンシン大学同窓会研究財団(WARF)の設立史研究、(2)ロックフェラー・フェローによる日米科学交流史研究、(3)Wisconsin Institutes for Discovery(WID)のプログラム研究の3つの方向から研究を行い、以下の成果が得られた。 (1)WARF初代専任所長のラッセルは、勃興するアジア諸国との国際競争下において、特許という知的財産権を発展させることが州民の利益を守ると考えた。彼は、大学が果たすべき社会的使命を、研究の自立性を確保して州民の負担を軽減し、地域産業の発展に貢献することであると考えて、WARF設立を推進した。 (2)1925年に日本を訪問したラッセルは、自然科学・社会科学分野の第1回ロックフェラー・フェロー選定のために旧帝国大学5校や各種研究所を訪問し、13人を選定した。フェローの史料は、ニューヨーク州ロックフェラー・アーカイブズに保管されており、これらの史料分析によって、アメリカ滞在時代の動向の解明が期待できる(中部教育学会第60回大会)。 (3)従来、大学のアウトリーチは、大学の基礎研究を社会で応用開発するリニア・モデルに基づいていた。ところが、WID(S)では、公的機関と私的機関が双方向的・補完的に協力して新しいイノベーションを前提とした価値形成をめざしている。その関係は、大学が市民の貢献を積極的に評価し、大学と社会が互恵的に繋がることによって、民主的な市民社会の形成に寄与するという「エンゲージド・ユニバーシティ」の枠組みによって理解できる(『アカデミア』第4号、2012年6月刊行予定)。なお、日米の大学開放政策の比較により、グローバル化時代において、大学開放が学習成果の国際通用性を測る鍵となっていることが明らかとなった(『大学時報』第60巻343号、2012年3月)。
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