2010 Fiscal Year Annual Research Report
日本版トラッキングの国際比較研究ー教育における共生と社会的公正の考察
Project/Area Number |
21530873
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
恒吉 僚子 東京大学, 大学院・教育学研究科, 教授 (50236931)
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Keywords | 教育社会学 / 比較教育 / トラッキング / マイノリティ / 多文化教育 |
Research Abstract |
どのような家庭背景や属性等を持つ児童生徒がどのような教育の機会を持つかは、多くの国で民族や人種間格差、階層格差と結び付けられて教育の機会均等や文化的な多様性と社会的公正の問題として議論され、社会問題化してきた。本研究では、教育上のライフチャンスに関わるプロセスとして「トラッキング」(tracking)を理解し、生徒の意識やミクロな選抜過程、実践やカリキュラム等の学校内のミクロなプロセスに注目し、マイノリティ視点、文化的多様性への視点を組み込みながら、「日本版トラッキング」の特徴を、国際比較を用いて相対化し、マクロな枠組みとミクロな教育実践の両面から浮き彫りにし、教育における文化的多様性と多文化共生、社会的公正をめぐる研究領域に、従来とは異なる角度から接近しようとしてきた。平成22年度においては、こうした意識のもと、一方では、文化的多様性・多文化共生に力点を置いた分析を行ない、"interactive"な多文化共生の理解を軸に、多様性と共生の実現の観点から編著にまとめた(Minorities and Education in Multicultural Japan)。もう一方の作業としては、筆者が以前から取り組んできた、国際比較から見た日本型教育システムの課題や可能性の観点から、協同的な学習や活動の場面に注目した。学力や背景の異質な児童生徒の協同的学習は海外においても狭義のトラッキング(学校内)に対抗する措置として提示されてきたが、日本型学校システムの一つの特徴として、協同的な学習を含む形で展開されている全人的教育のあり方に注目した。こうした多様性の共生という観点から日本の全人教育を、特別活動を柱に海外の教育関係、教育政策関係者が理解できる冊子にまとめつつある。
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Research Products
(3 results)