2011 Fiscal Year Annual Research Report
日仏の中等後教育における職業専門化と文化資本伝達の変容過程に関する研究
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21530876
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Research Institution | Joetsu University of Education |
Principal Investigator |
大前 敦巳 上越教育大学, 大学院・学校教育研究科, 准教授 (50262481)
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Keywords | 教育社会学 / 中等後・高等教育 / 職業専門化 / 文化資本 / 日仏比較 |
Research Abstract |
本年度は、主にフランスの人文系大学学部において職業専門化(仏語:profession nalisation)が進展してきた過程に着目し、行政資料・統計および編年史等の文献資料によるデータベースの補完を行ったほか、パリ市内と近郊の大学教員を対象に現地聞き取り調査を行い、近年の市場化改革に伴う文化資本伝達の変容過程について分析を試みた。 その結果、フランスでは日本とは逆に、開放入学制を原則とする大学が、急激な教育拡大に加えて若年失業の増加を受けて地位低下を起こした一方、短期高等教育機関が第三次産業の進展による就業構造の変化に順応し拡大を続けたことについて、1985年以降の文科系と第三次産業系(サービス系)分野の時系列データを分析し、学会報告と論文執筆を行った。また、教育システムの内部要因として、中等教育段階から供給母体となる普通バカロレア文科取得者の減少が影響していることも明らかになった。 さらに、職業専門化の進展過程について、1968年以降に設立された新構想大学が、人的資本、生涯教育等の社会的要請を受けて教育研究における複合ディシプリンを発展させた後、1980年代後半以降には日本と同様にグローバルな知識基盤社会が唱えられる中、伝統的大学が職業専門化を率先して推進するようになったことに着目した分析を行い、学会報告の準備を進めた。 他方、前年度に学会報告したP.ブルデューの文化資本概念を用いた説明理論について、市場化に伴う正統的文化の自律性低下に着目した高等教育の文化変動との関わりから論文を執筆・投稿し、『日仏社会学会年報』に掲載された。
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