2010 Fiscal Year Annual Research Report
多文化共生社会を指向した新しい国際歴史教科書対話と歴史教育カリキュラムの研究
Project/Area Number |
21530879
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Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
百合田 真樹人 島根大学, 教育学部, 准教授 (40467717)
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Keywords | 歴史認識 / 政治哲学 / 歴史教育 |
Research Abstract |
多様性とその概念について政治哲学からアプローチし、多様性との平和的共存をめぐる哲学的な考察と、検討をおこなった。このなかで、歴史認識の多様性がもたらす議論が前提とする概念について研究をおこない、歴史認識の表象としての教科書とその言説を比較することによる歴史教科書対話の限界を明示した。特に、自由主義が歴史性を否定することで、自我の独自性を主張している点に着目し、自由主義史観の誤謬を示した。この点については、島根大学教育学部紀要第44号に発表した。 歴史認識をめぐる政治性についても検討を進め、日本・韓国・米国の教科書が共通して取りあげる歴史事件(朝鮮戦争を事例とした)をめぐる表象の差異が、およそ問題化していないことに注目し、歴史認識とその表象の差異がそのまま歴史認識をめぐる問題とならないことを明らかにした。この研究については、国際学会誌(The International Journal of Social Education)に発表した。 平成21年度に収集した歴史教科書のうち、第2次世界大戦の開始と終了についての言説を英訳し、米国の研究協力者とともに日本・中国・韓国の教科書の共通箇所についての言説を比較検討した。この結果は、I.Nakou & I.Barca(編)Contemporary Public Debates on History Education (Charlotte,NC:IAP,2010)において刊行したほか、複数の国際学会で発表をおこなった。
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