2011 Fiscal Year Annual Research Report
グローバル化時代のメキシコにおける多文化教育に関する研究
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21530882
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
青木 利夫 広島大学, 大学院・総合科学研究科, 准教授 (40304365)
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Keywords | メキシコ / グローバル化 / 多文化主義 / 多文化教育 / 先住民教育 / 二言語・文化間教育 / 農村教育 / インターカルチュラル大学 |
Research Abstract |
本年度は、メキシコにおける多文化主義の理念や多文化教育政策について検討するため、メキシコ国立図書館を中心に資料の追加調査および収集をおこなった。最終年度にあたり、これまで収集した資料をもとに、20世紀前半から現代にいたるメキシコの農村教育・先住民教育の変遷とそこにみられる問題点について多文化の共生という視点から総括的な検討を試み、以下のような結論にいたった。 1.20世紀前半の同質的社会の構築をめざした先住民統合主義にもとづく国家の統合理念が、20世紀後半には、多様な先住民文化を承認する複数文化主義へと変容し、それにともなって二文化・二言語教育、二言語・文化間教育の導入という先住民教育政策の大きな転換があった。 2.そこには、グローバル化にともなう国内外の政治的・経済的変化のなかで、国際的な人権擁護の意識の高揚とともに、先住民自身による権利要求のための組織化や運動の拡大が影響を与えた。 3.とりわけ、農村教育・先住民教育を担う専門職として20世紀前半に誕生した農村教師が、20世紀後半には、二言語教師として教育政策の転換に影響力をもちはじめ、多文化教育を担う重要な役割をはたすようになった。 4.しかしながら、新自由主義政策のもとでの統合主義から複数文化主義への理念および政策の転換は、先住民の人権尊重につながる一方で、先住民政策に対する国家の関与の低下をもたらし、自主管理の名のもと必要な支援の切り捨てにつながる危険性をともなっていた。 これらの点については、南北アメリカの社会運動をテーマとする国際セミナー(ペルーにおいて開催)にコメンテーターとして出席し、口頭による報告をおこなった。こうした現代の課題を視野にいれたメキシコ教育史研究は、日本においてはほとんどなされていないことから、日本における教育研究および地域研究の蓄積に貢献することになろう。また、この成果を発表するための準備を進めている。
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