2009 Fiscal Year Annual Research Report
父親の家庭教育参加に関する社会学的研究―ジェンダーと階層再生産の視点から
Project/Area Number |
21530896
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
多賀 太 Kansai University, 文学部, 教授 (70284461)
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Keywords | ジェンダー / 階層 / 父親 / 家庭教育 / 男性性 / 教育社会学 / 生活史 / 男女共同参画 |
Research Abstract |
平成21年度には、先行研究のレビュー、父親および塾講師に対する予備的面接調査と平行して、特に「父親の家庭教育」に関わる諸言説の分析を中心に研究を行った。その結果、次の成果が得られた。 第1に、文献調査と、父親および塾講師に対する予備的面接調査から、私立中学受験への関心や受験者割合の高さは首都圏で突出していることが改めて確認された。 第2に、「父親の家庭教育」の重要性を説く政府文書や雑誌記事などの各種テキストを分析した結果、今日の「父親の家庭教育」言説は、従来の父親言説を構成していた「しつけ」や「世話」の要素に、受験勉強や進路選択のサポートである「チュータリング」の要素が加わることで、全く異なるイデオロギーを背景として複合的に構成されていることが明らかにされた。その成果は、国際学会および国内の学会で口頭発表されるとともに、学会誌に発表された(「『父親の家庭教育』言説と階層・ジェンダー構造の変化」『教育科学セミナリー』第41号)。 第3に、「父親の家庭教育」言説の批判的考察から、ホワイトカラーの父親たちが「チュータリング」言説に惹かれるのは、それらが、近年の階層構造とジェンダー構造の変化に適応しつつ自らのヘゲモニーを維持しようとする中流階層男性の戦略を反映しているからであるとの仮説が提起された。 特に上記第2の成果については、従来、ともすれば「父親の家庭教育」の多義性・曖昧性を放置したまま行われがちであった父親の家庭教育に関わる諸研究および諸施策を体系化するための基礎を提供した点に意義があると思われる。次年度には、上記第3の仮説の妥当性を検証すべく、父親に対する面接調査を中心に研究を進める。
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Research Products
(3 results)