2010 Fiscal Year Annual Research Report
父親の家庭教育参加に関する社会学的研究-ジェンダーと階層再生産の視点から
Project/Area Number |
21530896
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
多賀 太 関西大学, 文学部, 教授 (70284461)
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Keywords | ジェンダー / 階層 / 父親 / 家庭教育 / 男性性 / 教育社会学 / 生活史 / 男女共同参画 |
Research Abstract |
平成22年度には、子どもが私立中学を受験したか、これから受験しようとしている父親6名に対する生活史面接調査を実施した。前年度実施の2名分と合わせて、それらの調査結果を、当初の研究計画における仮説に照らして分析した結果、次の点が確認された。第1に、父親に子どもの受験勉強支援の必要性を痛感させる要因としては、仮説で示した階層下降不安や家庭内での男女平等化圧力以外にも、階層上昇志向、公立学校への不信・不満、高校・大学受験リスクの縮減、中学受験に要する支援の総量の増大など様々な見解が見られた。それらのうちどれを最も大きな要因と見なすかは、居住地域や父親の職種によって左右される傾向にあった。第2に、父親たちは、皆一様に、受験勉強の支援を含む昨今の「父親の家庭教育」の喧伝に対して肯定的な印象を持っており、中学受験できる層とできない層への二極化に対する懸念を示しながらも、そうした競争に乗れる条件にあるのであれば乗らざるを得ず、父親もそこに積極的に関わるべきだと考えていた。第3に、父親たちは皆、稼得責任の遂行に支障のない範囲で働き方を調整しながら仕事と家庭教育の「二重負担」を志向しており、彼らの家庭教育への参加は、その負担と引き替えに、彼らの家庭での地位を高めこそすれ、低めてはいないことが示唆された。また、当初の仮説通り、具体的な受験支援のあり方は、妻の就労状況と本人の労働条件に左右されており、妻が家事専業でない方が、また父親の仕事の自己裁量が利く方が、直接子どもの支援をする頻度が高い傾向にあった。上記の研究成果の一部は、国際シンポジウムにおいて口頭で発表されたほか、平成23年中に刊行予定の編著書の1章として執筆された。
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Research Products
(1 results)