2011 Fiscal Year Annual Research Report
父親の家庭教育参加に関する社会学的研究―ジェンダーと階層再生産の視点から
Project/Area Number |
21530896
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
多賀 太 関西大学, 文学部, 教授 (70284461)
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Keywords | ジェンダー / 階層 / 父親 / 家庭教育 / 男性性 / 教育社会学 / 生活史 / 男女共同参画 |
Research Abstract |
最終年度にあたる平成23年度には、子どもの私立中学受験を比較的積極的に支援した(している)父親5名と母親2名に生活史面接調査を行った。前年度までの調査分を合わせた計15名(父親13名、母親2名)の事例をもとに、父親の受験支援行動と受験に対する意味づけの具体的な様相を明らかにし、それらが現代日本における階層とジェンダーの再生産といかなる関係にあるのかを考察した結果、次の知見を得た。第1に、父親たちは中学受験に対して、公立の教育に対する否定的評価を背景とした「教育的リスク回避」、私立学校の積極的評価を背景とした階層「上昇」、水平方向に他者との差異化を図ろうとする「個性化」のうちのいずれかまたは複数の意味を見出していた。第2に、大部分の父親たちは、中学受験という家族の選択が世帯間の教育格差の維持・拡大につながる可能性を認識しながらも多かれ少なかれそうした選択を正当と見なしていたが、そうした意識は、必ずしも中学受験支援行動に先立って形成されていたわけではなかった。彼らの家族の教育戦略は、必ずしも一枚岩の安定したものではなく、父親と母親と子どもそれぞれの意向をすりあわせるなかで時間と共に変化しうる多層的で動態的な性質を持っていた。第3に、父親たちの受験支援行動は、学校の情報を調べて子どもの適性や学力を勘案しながら受験校選択のアドバイスをする「学校選択支援」、子どもに直接勉強を教えたり勉強のスケジュールや教材を作成したりする「受験勉強支援」、子どもの通塾時の送り迎えや模擬試験時の付き添いなどの「受験生活支援」という3側面として把握された。こうした父親による受験支援は、大部分の家庭において、扶養役割の遂行に支障のない範囲で行われ、家庭内での父親の権威を高めるよう作用していた。したがって、そうした父親たちの行動は、結果的に、一方で家庭内男女平等を促進しながら他方で性別分業と男性優位に基づくジェンダー構造の再編と強化に寄与していることが示唆された。
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Research Products
(5 results)