2009 Fiscal Year Annual Research Report
現代カナダ先住民教育実践研究―教育に関する先住権保障の展開過程
Project/Area Number |
21530899
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Research Institution | Kagoshima Immaculate Heart University |
Principal Investigator |
広瀬 健一郎 Kagoshima Immaculate Heart University, 国際人間学部, 准教授 (80352491)
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Keywords | 先住民教育 / 先住民権 / 人権 / 教育学 / カナダ地域研究 |
Research Abstract |
本年度は、先住民自治政府のひとつであるニスガ政府を題材に事例研究を行った。具体的にはニスガ政府庁舎における政府刊行物および教育に関する法令の収集、ニスガ教育委員会における教育長へのインタビュー調査および教育委員会作成の教材の収集、ニスガ初等・中等学校における学校長および進路指導担当教員へのインタビュー調査、学校文書の収集を行った。またブリテイッシュ・コロンビア大学附属図書館において、ニスガに関する新聞記事を調査、収集した。その結果、次の諸点が明らかになった。 1)ニスガ政府の教育行政機構が明らかとなった。ニスガ政府は教育に関する立法権能を有しているが、教育内容に関しては独自の教育法規を制定していないことを確認した。 2)現在、ニスガ教育委員会は、各学区においてコミュニテイミーティグを開催することを通して、学校教育への住民参加を推進しようとしていることを確認した。 3)コミュニィミーティングでの議論をうけてユースコミッティが組織され、青少年問題への対策が、ニスガの伝統的習俗にのっとって推進されていることを見出した。 4)保育所、高等教育機関においても教育自治が実践されていた。とりわけ、保育所、初等・中等学校、高等教育機関の教育自治の相互連関が、州平均並みの高校卒業率、大学進学率を結果しているのではないかとの仮説を得た。 5)ニスガの子ども達には、日常的に様々な伝統行事や伝統舞踊等への参加の機会が豊富にあることが判明した。 以上の諸点から、ニスガの教育自治を支えているのは、ニスガ政府の法令によるというよりも、ニスガ条約のもとで、保育所、初等・中等教育、高等教育の各段階における教育自治を実践し、乳幼児期から高等教育までの学びを支援する体制があること、地域住民の学校運営や伝統文化の伝承への参画機会が、フォーマルにおいてもインフォーマルにおいても存存することにあるのではないか、との仮説を得た。
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Research Products
(1 results)