2011 Fiscal Year Annual Research Report
現代カナダ先住民教育実践研究―教育に関する先住民権保障の展開過程
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21530899
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Research Institution | Kagoshima Immaculate Heart University |
Principal Investigator |
広瀬 健一郎 鹿児島純心女子大学, 国際人間学部, 准教授 (80352491)
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Keywords | 先住民族教育 / 先住民権 / 人権 / 教育学 / カナダ地域研究 |
Research Abstract |
ギックサン民族の先住民族教育権保障の実践を調査するため、ギックサン教育委員会、ノースウェストコミュニティカレッジにて資料調査を行った。その結果、ギックサン民族の成人学習センターが、高等教育機関の役割を担い、看護師や保育士等、地域づくりの人材養成を行っていること、公立の高等学校に進学しなかった者や高校中退者向けの民族学級を開設していることを知り得た。先住民族北方開発省の補助金の他、民間団体の補助金を活用しつつ、既存の大学や高等教育機関と協定を締結し、成人教育センターを提携大学の「キャンパス」とし、民族内部の専門家を講師に起用していた。バンクーバ島のサーニッチ民族においては、2012年より民族幼稚園においてサーニッチ語のイマージョン教育が実施されており、その開設経緯を取材した。またサーニッチ民族政府も成人学習センターを開設しており、ヴィクトリア大学やコムスンカレッジと提携し、サーニッチ語教員の養成を行っていること、また、その経緯についての情報を収集した。 ギックサン民族、サーニッチ民族のいずれも、先住民族教育権保障にかかる実践には、成人学習センターが機能していること、またいずれの成人学習センターも、既存の大学・高等教育機関と連携し、先住民族居住区において高等教育を受ける機会を設けていた。すなわち、先住民族教育権を保障する上で、民族自身が開設する成人学習機関が基盤となるとともに、既存の大学との連携が先住民族教育権の実質的保障において重要な役割を果たしていることが明らかとなった。この知見から、先住民族による成人学習機関ないし民族大学開設に関する研究が必要であることや、カナダの既存の大学は、先住民族自治体とどのような連携を図ってきたのかという新たな研究課題を見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
各年度における資料調査については、計画とおりほぼ実施できている。ただし、一部の機関について、天災(暴風による休校)等の影響により、急遽、調査を見送らねばならなかった所がある。そのため、再度訪問調査を実施する必要があり、これらの機関にかかわる研究成果の発表が、やや遅れている。そのほかについては、計画とおり研究発表を行っており、おおむね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は本研究の最終年度であることから、これまで諸般の事情により調査を実施できなかった機関にて、資料調査・収集を行い、研究発表の上、論文にまとめる。また、既に、学会等にて発表してきた研究内容を、論文にまとめる。論文にまとめるにあたり、新たに収集する必要のある資料がでてきた場合には、適宜、補充調査を行うこととする。
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