Research Abstract |
平成21度における本研究のうち,学術的・社会的貢献として意義ある成果は、以下の通りである。 (1)欧州の母語教育における関係実践・教育課程の事例研究として,Englandの初等中等学校,及び教育関係機関への実地調査を行った。具体的には、Englandにおける伝統文化としてチューダー朝時代に注目し,現地の小学校(Wroxham Primarily School)に丸一日参加観察を行った。その結果,算数から国語,家庭科,理科を総合した伝統文化のトピック学習がほぼ全体像として記録され,[伝統的な言語文化]を初等教育機関で実践する際の示唆を得た。 (2)我が国の伝統と文化に深いかかわりをもつアジア地域として,台湾への実地調査を行った。具体的には,花蓮市の慈済大学及びその附属初等中学校における古典文学の教育課程と実践事例の取材,また,台湾で小学校から大学まで過ごした劉晏君氏(現筑波大学大学院)への聞き取り調査を行い,[伝統的な言語文化]に関連する学習歴をライフストーリー研究としてまとめた。その結果,台湾における[伝統的な言語文化]の教材系列,学習指導の一般像,日本文化の受容における傾向などを聞さ取ることができた。 (3)[伝統的な言語文化]の記述内容に関する系統性を見出すための実践的研究として中学校と高等学校における授業研究を実施した。日本の伝統文化を表象する同一教材をそれぞれの教育実践場面で取り上げ,学習者の反応においてどのような差違が見られるか分析を行った。その結果,中学生にあっては[伝統的な言語文化]の履修にアプロプリエーション概念の導入が有効であること,高校生にあっては個の内面的な思考の深化に学習指導上の力点が求められることなどが示唆された。 これらの成果は,日本読書学会等における研究発表をはじめ,年間15回の講演・指導で学校関係者に還元している。また,学部内のFD研修で報告するともに,字習指導要領解説の記述にあたっても活用された。
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