Research Abstract |
PDCAサイクルは活動の目標・計画(Plan)を立て,それを実施(Do),評価(Check)し,フィードバックして次の活動の改善(Action)につなげるマネジメント用語として知られる。本年度における研究は,このPDCAの概念による社会科授業の改善の方法論の理論化を図った。これは,先行研究における授業構成要素の部分的な改善の問題点,一元的な社会科学力観からの授業改善のあり方を越え,多元的な学力観に応じる新たな授業改善の方法論としたものである。 まず,各々の社会科学力観に依拠する授業の内部に入り込み,実践者がどのように授業を開発し改善を図っているのか,内在的な改善の論理を明らかにするものである。これにより,対象とする授業の構成要素を包括し,目標・内容・方法を一体化した論理整合的な授業改善を示すことが可能となる。そして,授業観,授業の組織,授業の具体からなる授業構成の各段階の計画と,期待する学習成果と授業の事実,学習者に形成された知識,能力,態度を峻別し,授業構成の各段階と計画-実践-評価-改善を組み合わせたPDCAのモデルを示した。各類型化された授業の評価観点と改善を示すことにより,自らが依拠する授業観それ自体を相対化し,異なる授業観との相違を吟味,俯瞰する授業改善を図る螺旋PDCAサイクルの必要性を示した。これは,理念や本質論の異なる社会科授業を外部から見取り,評価・改善をせまっていた従来の授業改善と異なり,資質形成の違いによって類型化される授業の内在的なPDCAを確定し,さらに各々の授業観に基づく授業構成と,他の相違を比較・統合する外在的なPDCAである。
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