Research Abstract |
本研究では,初年度までに当時研究協力者であった宮本浩治教諭(平成21年度まで広島大学附属中高等学校,平成22年度から研究分担者・武庫川女子大学)による中学校1から3年の説明的文章の読みの授業を観察することで,論証理解を学習課題とする授業過程と,学習者同士の協同的過程における論証理解過程を分析した。次年度には,これを基盤として,研究協力者3名による説明的文章の論証理解を扱った授業を共同的に設計し,授業観察を行った。 最終年度である平成23年度には,研究課題を「教師への関連型モデルの教授と実験授業を通して,学習者における学力形成,教師における授業改善という二つの側面からモデルの有効性の検証を行う」ことに置き,前年度に観察・記録した3つの授業の分析を行った。その結果,いずれの授業においても,学習者による論証理解の深まりと,教師における授業改善の両面において効果が見出された。さらに,宮本による授業を含めた4名の教師による,説明的文章の論証を扱った授業について,次のような授業モデルの類型化を行うことができた。「A 生活世界における論証理解=日常生活で当面するコミュニケーション上の問題を解決することを軸とした授業」「B 説明的文章の読みにおける推論的な論証理解=説明的文章の論証における暗黙の前提を補って理解する方向での授業」「C 説明的文章の読みにおけるクリティカルな論証理解=説明的文章の批判的吟味に焦点化した授業」「D 説明的文章の読みのカリキュラム的展開…年間カリキュラムにおいて,BとCを統合する実践」 なお,本年度には,学習者の研究として残されていた課題「論理的文章の読みにおける論証の理解能力(論証のスキル的側面)の発達を明らかにする」ことにも取り組むことを計画していたが,観察した授業にける協同的過程の分析にとどまり,個人を対象とした発達調査を取り立てて行うことはできず,課題として残った。
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