Research Abstract |
本年度の研究では,算数の授業研究の結果も踏まえながら,「考えさせること」と「教えること」の調和を図った算数科の授業構成や単元構成の過程について検討するとともに,指導上の留意点を導出した。 例えば,「数と計算」における単元構成として,(a)演算の意味の検討および定義,(b)問題の答えの探究,(c)計算の方法や仕組みの探究,(d)計算の形式化,(e)活用,という過程を想定する。各過程の概要と「考えさせること」と「教えること」の調和という視点からの指導上の留意点は次の通りである。 (a):新しく学習する演算について,既習の演算との類似点,相違点や新しい演算の必要性について「考えさせた」後,演算の意味を知らせる。このとき,用語などは社会的知識(知らせること)であるが,概念については教室で合意されていることが重要である。 (b),(c):児童なりのやり方で答えや計算の方法を考えさせる。ここでは,教師が答えなどを天下り的に知らせるのではなく,児童自身が「考える」ことが重要である。このとき,「考えさせる」ためのレディネスを保証する工夫が必要である。見積もり等による結果の見通しを重視するともに,方法の見通しについては,それが解法を知らせることにならないよう留意する必要がある。また,多様な方法を児童が案出した場合,(d)で扱う方法だけでなく,他の方法も公平に価値付けする必要がある。 (d):社会的知識としての計算の方法(筆算形式など)を知らせるが,(b)や(c)における探求と切り離すのではなく,その関連付けを可能な限り図る必要がある。このとき,インフォーマルな表現を媒介として重視すべきである。 (e):学習した計算の性質の探究やその活用であり,児童に「考えさせる」ことが中心となる。
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