2011 Fiscal Year Annual Research Report
図形認識に関する質的研究に基づく認識状況判定基準の開発研究
Project/Area Number |
21530953
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Research Institution | Oita University |
Principal Investigator |
川嵜 道広 大分大学, 教育福祉科学部, 教授 (80169705)
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Keywords | 図形認識 / 質的研究 / 図形指導 / 認識判定基準 / 図形概念 / 認識の変容 / 図形授業 / 開発研究 |
Research Abstract |
平成23年度も,これまでの認識論的研究及び質的研究の成果を反映させた授業構成を行った。第5学年の合同の単元において,図形概念の形成のために理想とすべき授業の流れとともに,子どもの図形認識の流れに留意した。図の見え方のイメージ的表象に基づいて図形の判断がなされることを考慮して,様々な位置や形の三角形を提示するように工夫した。 次に,合同の単元を例として,図形授業における図形認識の変容過程を解明した。これまでの研究において得られている理解の様相モデルの知見とともに,質的研究により得られた個々の子どもの認識の発達の特質を合わせて考えることにより,図形認識の変容過程を設定した。変容過程は,5つの理解の様相を,行き来しながら変容していくこと,そして,変容の要因は,授業におけるコミュニケーションや教師の意図的な関与であることがわかっている。図形の見た目のイメージに左右されることなく合同な図形を判断するための基準を構築し,その基準に基づいて具体的な指導計画を策定した。 さらに,図形認識状況を同定するための問題及び判定基準の開発も試みた。変容の状況を客観的に評価するためには,図形概念の5つの表現様式に基づく評価問題を作成する必要がある。したがって,今回は特に,合同の認識を例として,5つの表現様式それぞれに対応する小問を作成した。そして,変容の条件を同定し,図形認識の変容の判定基準とするために,調査結果を図形概念の二面性(言語的表象とイメージ的表象)の観点から評価することとした。具体的には,合同の認識を例として,5つの表現様式それぞれに対応した問題例を作成し,図形概念の二面性の観点から評価するための基準も同定した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
図形認識に関する質的研究により「図形概念の変容過程」を捉えることができたが,事例が少ないために,変容過程の一般化ができていない。学年や指導内容が変わると,変容過程も変わることが考えられる。図形認識の判定基準については,第5学年の合同の単元に限定すれば,開発できたといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
図形認識の判定基準を,学校数学の図形指導におけるすべての学年のすべての指導場面に適用するために,可能な限り多くの指導単元における図形概念の変容過程を解明していく。しかし,すべての学年を網羅した判定基準を作成するためには,「図形認識能力」と呼べる能力を5つの表現様式のそれぞれに対して設定し,そして各能力の変容過程を解明することで判定基準を作成する必要がある。図形認識能力の解明には,さらにある程度まとまった研究期間が必要であると考えられる。
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Research Products
(1 results)