Research Abstract |
本年度は,学生の「色彩感覚」の診断的評価を行い,その結果に基づき「『色彩感覚の判定』のためのツール」としてのソフトを開発した。 学生の「色彩感覚」を診断するため,色彩感覚調査アンケート,色彩配色テスト,協和色・不協和色の条件の調査,色彩に関する知識調査,色彩理解のための授業開発の5つの方法で評価を行い,その結果,学生にとって育成が必要な色彩に関する能力として,「色彩の協和・不協和の感覚」及び「色彩の心理的印象の理解」があるとした。また,これらの評価により,学生は自らの感覚を用いて色彩の学習を行った経験が少なく,学校教育では必ずしも色彩に関して基礎的な内容が教えられていないことも分かった。 上記の結果に基づき開発したソフトが,「色彩を用いた文字の表現」と「色彩による構造の表現」である。これらのソフトは,見易い文字色と背景色の組み合わせの学習及び構造が理解出来る文書の作成の学習を目的にしている。ところが,これらのソフトを「『色彩感覚の判定』のためのツール」として使用したところ,予め,色彩を正しく見る能力を習得しておかなければ,有効なソフトの利用が出来ないことが分かった。なぜなら,繰り返しソフトを使用しても,その結果を客観的に理解出来る能力を持っていなければ蓄積のない繰り返しに終わってしまい,学習成果を得ることが難しいと分かったためである。そこで新たなソフトとして,「色彩を正しく見る能力テスト」を開発することにした。 本ソフトは,不規則に出題される1色の色見本と同じ色をどの程度の正確さで選べるかを自覚するため正解と回答との差をRGBの過不足で示し,個人の色彩感覚の傾向を数値で表示するソフトである。本ソフトを使用することで,自らの色彩感覚を数値として理解し,その数値を手掛かりに,意識して色彩を選ぶことが可能になった。
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