2009 Fiscal Year Annual Research Report
西陣織の技術伝承に関わる教育プログラム及び教材の開発研究
Project/Area Number |
21530993
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Research Institution | Kyoto City University of Arts |
Principal Investigator |
金沢 靖子 (藤野 靖子) Kyoto City University of Arts, 美術学部, 准教授 (50363966)
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Keywords | 西陣織 / 伝統工芸技術 / 技術伝承 / 教育プログラム / 大学教育 / 教材開発 |
Research Abstract |
21年度は、教育プログラム作成を目的とした、西陣織の基盤をなす原理・原則を、A:製織システム、B:製織技術、C:織物組織構造という3つの視点から調査研究を行った。さらに獲得した成果を大学における教育プログラムへと展開し、2つの試行授業(各:半期15回計45時間)を実行した。 A:フランス、リヨンでの現地調査研究を踏まえ、手から機械への移行期における織システムの変遷を解読し、原初的な産業革命の製織システムが、教育プログラムに非常に有効な素材であるという結論を導き出した。この成果は本研究で提示される独自性をもった教育プログラムのひとつの方向性を示すものとなる。 B:機や動作などの『音』を伝承教育として導入するという発想を、『音』と織物の種類(組織・素材)との関係や織手の動作(タイミング・強弱)に焦点を定め研究調査した。西陣機業織屋を中心に『音』を収集、リズム(手順)の違いを機軸に分類し、製織技術を『音』で分類する可能性を見出した。また、今年度後期に行った試行授業において、『音』を用いて織手が必要とする所作(製織技術)の獲得効果を実際に検証した。これらの成果は、西陣織という複雑な製織技法を明確かつ簡潔に伝承するための大きな手がかりであり、次年度以降、具体的な教材開発への展開をはかる。 C:『西陣織物詳説』の解読や、機業織屋の取材調査研究から、西陣織の教育プログラムに不可欠な織機構造の設計を実現した。すでに制作、設置も完了し、これによって本研究教育プログラムの大きな方向性を確立するに至った。また、本年度参加した「京都工芸繊維大学資料館染織品調査研究」の成果として、織物組織構造の理解と実際の織物創造へとつなぐための具体的な教育プロセスに関する着想を得、本年度その1課程を試行授業に展開し、実行した。
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