2010 Fiscal Year Annual Research Report
音楽構成要素の分解と再構築による聴音課題作成とその教育効果に関する研究
Project/Area Number |
21530995
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Research Institution | Tokyo University of Technology |
Principal Investigator |
伊藤 謙一郎 東京工科大学, メディア学部, 准教授 (90386772)
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Keywords | 聴音課題 / ソルフェージュ / フォルマシオン・ミュジカル / 音楽構成素による分析 |
Research Abstract |
平成22年度の研究は、日本とフランスで現在、市販されている聴音テキスト(合計70冊を収集)の音楽構成要素別の分析、およびその分析結果のデータ化(数値化)を計画していた。分析対象とする音楽構成要素は「調性」や「拍子」「音程」など7つの項目で、前年度にそれらの分析方法を確定させていたので、作業は円滑に進められると見込んでいた。 しかし、実際に分析を進めてみると「リズム」の項目での「シンコペーション」において、さらなる検討の必要性が浮き彫りとなった。諸種の音価とその組み合わせにより、多種多様なリズムが生じることは十分認識していたものの、シンコペーションに関しては、単にリズムの外形的な形態のみではなく、拍の強点・弱点とどのように結び付けられて形成されているかの考慮が不足していた。拍の強点・弱点は絶対的に確定されるものではなく、基本の拍子の中で相対的に認識されるので、どの階層まで拍点を細かく見るかによって、シンコペーションであるかどうかの結果が変わってしまう。そこで、シンコペーションと見なす最小の分析対象は弱拍の移勢までとし、各拍子の1拍内での拍の移勢は、シンコペーションではなく単なる「分割」とする基準を設定することとした。 上記のシンコペーションに関する基準設定のために多くの時間を費やしたため、分析課題数は486題にとどまり、当初予定の1000題に及ばなかった。しかしながら、既存の聴音テキストで曖昧だったシンコペーションの定義付けに一つの指針を示すことができたのは、大きな意義があるものと考えている。また、分析課題数は不足しているものの、レヴェルアップを図る聴音テキストでは、ある種の学習効果を狙った課題作成・配置がなされていることが、音楽構成要素の分析結果の数値として客観的に把握できた。 今後は分析課題数を増やすことでデータの精度向上を図り、聴音課題のサンプル作成につなげていく。
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