Research Abstract |
本研究は盲児,盲・知的障害児に実施可能な動作性知能評価法の開発を目的とし,今年度は動作性認知能力と日常生活動作獲得の関連について明らかにすることを目的として調査を実施した。対象は盲学校幼稚部に在籍する盲幼児19名であった。その結果,動作性知能を評価する立体型はめ課題達成数と日常生活動作の達成数には相関係数r=.68と,強い正の相関が認められた。このことから,日常生活動作の獲得は立体型はめ課題に見る動作性の認知能力と強い関連があることが示された。さらに,立体型はめ課題の達成と日常生活動作獲得における盲幼児の傾向を知るために,対象児を立体型はめ課題の達成の視点から,(1)下位群:立方体および三角柱の分割なしに困難を示し,立方体の分割においても困難であった者,(2)中位群:下位群でない者の内,三角柱の2分割は達成できなかった者,(3)上位群:三角柱の二分割が達成できた者の三群に分けた。その結果,下位群は5名,中位群9名,上位群5名であった。各群の平均達成課題数は,下位群16.4,中位群23.1,上位群24.0であった。三群間の日常生活動作の達成項目数の差を検討するために,1要因被験者間計画の分散分析を行った結果,条件の効果は有意であった(F(2,16)=5.02,p<.05)。多重比較によれば,各条件の平均の大小関係は「上位群=中位群〉下位群」であった(MSe=18.38,p<.05)。立体型はめ課題達成の程度と日常生活動作獲得の状況とを比較してみると,下位群は高位群や中位群よりも有意に日常生活動作の達成項目数が少なかった。以上のことから,日常生活動作の獲得と立体型はめ課題に見る動作性の認知能力との間に強い関連があることが示され,基本的な動作性認知能力の育成が日常生活動作獲得のレディネスの一つであると考えられる。
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