2009 Fiscal Year Annual Research Report
高機能広汎性発達障害児の語用障害を援助できる支援者養成プログラムの開発
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21531017
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
高橋 和子 金沢大学, 子どものこころの発達研究センター, 特任助教 (30432545)
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Keywords | 会話分析 / 高機能広汎性発達障害 / 語用障害 |
Research Abstract |
高機能自閉症児1名について、8歳から9歳の1年間に、本人と親密ではない第3者 4名との間で行われた1対1会話、合計22回の記録をすべてトランスクライブし、この時期の高機能自閉症児の生起する語用障害のバラエティを特定し定量的に評価するための、データベースを構築した。またあわせて、会話のパートナーとなった大人の個人差を、大人のコミュニケーション戦略と子どもの語用障害の補償技法の視点から記述し、高機能自閉症学童と、それにナイーブな大人との間で生じるコミュニケーションの失敗のパタンの抽出を行い、臨床的介入の必要度に応じたリストを作成した。また、大人のコミュニケーション戦略そのものの個人差も分析し、臨床的介入の方法の調節の手がかりも整理した。子ども側の語用障害は、文脈利用の失敗による大人の発話に無関連な応答、あるいは応答不能にともなう話題の変更や大人の話かけに対する無視、大人が特に関心のない詳細すぎる情報の提供、話題そのものの合意なしの変更や終了などが主なものであった。大人4名にも大きな個人差があり、子どもに親密な母親のコミュニケーション戦略ならびに補償技法に近いものを介入前から活用する者もあれば、情動的な共有関係の形成にとらわれて意味のある会話にいたらない失敗を重ねた後に、モデルとなる母親の伝達行動をとりいれる者もあった。臨床介入の対象となる語用障害の生起は会話相手の大人のコミュニケーション戦略と、訓練前からの既有会話的タクトの状態に左右されていることが明らかとなった。
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