2012 Fiscal Year Annual Research Report
特別支援教育にかかわる教員の専門性とメンタルヘルスとの関連に関する実証的研究
Project/Area Number |
21531032
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
田中 敦士 琉球大学, 教育学部, 准教授 (40347125)
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Project Period (FY) |
2009-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | メンタルヘルス / 教員 / 特別支援教育 / 専門性 / EAP / うつ / ストレス / コーピング |
Research Abstract |
本研究課題の第1の目的は、特別支援学校教諭免許状の有無と専門性およびメンタルヘルスとの関連について、教員に対する質問紙調査と諸検査から実証的に明らかにすることである。研究第4年度は、特別支援学校教諭免許状を保有しないまま障害児の指導にあたっている現職教員122名および免許状を所持し特別支援学校に勤務している教員24名を対象とした。当初100名を予定していたが、沖縄県内特別支援学校からメンタルヘルスに関する研修とメンタルチェックの実施を依頼され、当初計画以上の教員数となった。十分な説明の上で、個人情報に細心の配慮をして無記名番号式の結果フィードバックを保証し実施した。調査結果から、6割以上もの教員が精神健康度検査(GHQ28)で6点以上を示し、メンタルヘルスに不調がみられた。「ストレッサー尺度」「対処行動測度」等についてもデータ収集し、教職経験年数や特別支援教育の専門性自己評価、校内/校外相談者の有無、ソーシャルサポート等との関連性について検討した。教師のストレスにつながりやすい項目としては、昨年同様に「保護者の対応」、「個別の教育支援計画の作成」等が上位を占めた。 本研究課題の第2の目的は、教員の精神疾患の予防方法について、訪問調査から優れた実践ノウハウを収集し、わが国の各都道府県教育委員会等で実施するのに望ましい予防プログラムの試案を作成することである。第4年度は国内外の民間企業等で広く導入されているEAP(従業員支援プログラム)についての情報収集を引き続き行い、各事業所のサービスプログラムについて分析した。また、EAPに関する民間企業や沖縄障害者職業センターと共同で立ち上げた研究会においても、沖縄県における教員へのEAPに関する具体的な対策についても検討した。メンタルヘルスやEAPに関するこれまでの研究成果についても国際学会で発表したり、雑誌論文に投稿し掲載された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
データは当初の計画通りにほぼ順調に収集できている。プライバシーに配慮して慎重に行う必要のある調査内容であるため、あくまでも希望者のみに実施していることから、データ収集には波があるが、それも毎年ほぼ同水準の数が確保できている。 EAPのプログラムについては、様々な機関から情報収集を図っているが、EAP企業にとっては生命線の最重要情報でもあるため、信頼関係の構築のため直接対面で何度も訪問する必要性が生じている。そのため旅費が研究開始前の想定以上に必要となっているが、共同で研究会を立ち上げ、具体的な対策ができるシステム構築まで話が進んでいる。本研究課題で目的に掲げたプログラムの試案はすでにほぼ完成している。 また、研究協力者である大学院生をインターンとしてEAP企業の附属研究所に送り、より密接な共同研究も可能になった。また、次年度には専門の学会も誘致したので、本研究課題に関する成果発表と意見交換の場も設けたいと考えている。こうした点では、当初計画以上の成果を得ることができていると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
第1に、当初計画を忠実に進め、教員のメンタルヘルスの関するデータの一層の蓄積を図る。具体的には、特別支援学校教諭免許状を保有しないまま障害児の指導にあたっている現職教員100名を目標にデータ収集を年内まで行う。 第2に、研究最終年度に当たるため、教員向けの啓発に資するリーフレットを作成し、メンタルヘルスの悪化やうつ病の予防のために教員や教育関係者らに配布したい。 そして、EAPのプログラムの試案はすでに作成したが、実際にそれを実行できる体制つくりにも検討を進めたい。EAPに関する民間企業や沖縄障害者職業センターと共同で立ち上げた研究会を引き続き活用し、本研究課題で作成したEAPのプログラムの活用方法まで議論を進める予定である。
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