Research Abstract |
有限群をGとし,標数p>0の代数的閉体をFとする.群環FGのブロックをBとし,その不足群をDとする. Bのカルタン行列をCとし,その最大固有値をρ=ρ(B)とする. 北海道教育大学旭川校の奥山哲郎との共同研究により,既約Brauer指標の次数の2乗和に関するある条件(*)を満たすブロックは,Cのある固有値λがDの位数|D|と同じ(π)-部分をもつことが証明できた.条件(*)はp-可解群のp-ブロックでは成立するが,一般の群では成立しない.その反例を,東京医科歯科大学教養部の清田正夫と見つけることができた.その例は,p>3の場合で,p=2,3の場合には見つからなかった. そこで,p=2のとき,n次対称群S_nの2-ブロックBでは,(*)は成り立つだろうか?この問題が出発点となった. n=17まで計算した結果,Bには高さ0の既約Brauer指標が,一つしかなく,その結果(*)が自動的に成り立っている. 当初このようなことは知られているのではないかと思った.しかし文献を探しても分からず,対称群の既約Brauer指標の次数を決めることは,きわめて困難であり,そのこと自体が未解決問題であると知った.約一年をかけ,奥山哲郎の証明の方針に基づいて,和田と清田が検証した結果,次の定理を得るに至った.定理.任意の次数nの対称群S_nの任意の2-ブロックBにおいて,高さ0の既約Brauer指標はただ一つしかない. どの有限群のp-ブロックも高さ0の既約Brauer指標を少なくとも一つは持っているが,一般には一つだけとは限らない.この定理は,対称群において,奇数次数の既約2-Brauer指標は自明なものしかない,というFongとJamesの定理を一般化したものになる.現在この論文をJournal of Algebraに投稿中であるが,証明が難解とみえ,約一年がたつがまだ査読中である.
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