2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21540030
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Research Institution | Kinki University |
Principal Investigator |
尾崎 学 Kinki University, 理工学部, 准教授 (80287961)
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Keywords | 岩澤理論 / ガロワ群 / 馴分岐拡大 / 岩澤不変量 / 岩澤加群 |
Research Abstract |
素数pに対して、代数体kの円分的Z_p-拡大体K上の様々な制限分岐p-拡大を考えることは本研究の主要テーマの一つである。本年度はと共に、pを含まない素数の有限集合Sに対して、K上の最大S-分岐アーベルp-拡大のガロワ群X_S(K)を考察した。この拡大は馴分岐となるので一般にX_S(K)の構造を知ることは非常に困難である。 特にX_S(K)のZ_p-階数λ_S(K)は岩澤不変量と呼ばれる基本的な数論的対象であるが、岩澤理論創始から半世紀余が経過したにも拘らず、このλ_S(K)の値に関する研究は十分とは言い難い。しかし、研究協力者の伊藤剛司氏と水澤靖氏との共同研究により、kが有理数体の場合にはX_S(K)のZ_p-階数λ_S(K)を完全に決定することに成功した。pが奇素数の場合を具体的に述べれば、λ_S(K)は1がSに含まれる素数全体を亙るときの、1の上にあるKの素点の個数N(1)たちの和から、N(1)の最大値を引いた値と等しい。p=2の場合には公式はもっと複雑になるが非常に興味深いものである。 これを用いてp=2、kが虚二次体の場合のλ_S(k)の公式も得られた。これは馴分岐版の木田の公式と見做すことができる。証明の鍵は、p-進対数函数の値の線形独立性に関するBrumerの定理をあるKummer拡大の生成元のp-進独立性の証明に適用することである。この超越数論の結果はアーベル体に対するLeopoldt予想の証明でも使われた深い定理であり、これをうまく使えたことが公式の証明に繋がった。 本年度のこの研究成果は、K上の最大S-分岐p-拡大(アーベル拡大とは限らない)のガロワ群の構造研究の足がかりとなるであろう。
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