2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21540030
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Research Institution | Kinki University |
Principal Investigator |
尾崎 学 近畿大学, 理工学部, 教授 (80287961)
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Keywords | 代数体 / ガロワ群 / イデアル類群 / 最大不分岐拡大 |
Research Abstract |
今年度に得られた最大の研究成果は,報告者が以前に定義した代数体のイデアル類群上のWeilペアリングの類似物に関するものである。このペアリングは,考えている代数体の最大不分岐メタアーベル拡大のガロワ群の群論的な構造によって完全に決定されることが報告者の研究により判明しているので,代数体の最大不分岐メタアーベル拡大のガロワ群の構造を研究する上で重要な役割を果たすものと考えられる。しかし,このペアリングはWeilペアリングとは異なり,単数群のGalois cohomology群に値をとるため,扱いが難しい。報告者はこのペアリングに関していくつかの予想を提起しており,その一つに「このペアリングの像は(Weilペアリングと同様に)巡回群であろう」というものがある。本年度の研究によって,この予想がいくつかの特別場合に肯定的に解決された。具体的に述べれば,以下の条件が満たされれば,代数体Kのイデアル類群上のペアリングの像は巡回群である: 各素数pについて,(1)Kのイデアル類群のp部分が基本アーベルp群もしくは巡回群,あるいは(2)Kの最大不分岐p-拡大がアーベル拡大,のいずれかが成立する。 証明は不分岐アーベル拡大におけるイデアルの単項化に関する鈴木の定理と,淡中の定理を組み合わせることでなされる。この結果は特別な場合のみを扱ってはいるが、一般の場合に予想を証明する手掛かりが得られたものと考えられるので,今後のこのペアリングに関する研究が進展することが期待される。
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