2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21540062
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
井関 裕靖 慶應義塾大学, 理工学部, 教授 (90244409)
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Keywords | 剛性 / 固定点性質 / 有限生成群 / 調和写像 / ランダム群 |
Research Abstract |
昨年度までの研究において、有限生成群Γの非正曲率距離空間Yに対する等長的作用が固定点をもつ十分条件を、ΓからYへの同変写像のn-ステップエネルギーとk-ステップエネルギーの比を用いて与えることができることがわかっていた。一方、同変写像のn-ステップエネルギーとk-ステップエネルギーの比は、Γの表示から構成される有限グラフからYへの写像のRayleigh商と非常に似通った振る舞いをすることもわかっていた。この二つの値は一般には一致しないが、Γの表示から構成される有限グラフからYへの写像の Rayleigh商の値が、n-ステップエネルギーとk-ステップエネルギーの比を非常に高い確率でよく近似するということを示すことができた。この事実の応用として、ある仕方でランダムに有限表示群を与えたときに得られる群が、非常に高い確率で、特異性がそれほど高くないすべての非正曲率距離空間に対する固定点性質をもつ(より正確には、プレイン・ワード・モデルのランダム群が特異性のそれほど高くないすべての非正曲率距離空間に対する固定点性質をもつ)ことを示すことができた。 最近の種々の研究成果から、実は、非常に多くの群が強い固定点性質あるいは剛性をもつことが示唆されていたが、上述の研究成果はこれを裏付ける結果である。プレイン・ワード・モデルのランダム群は任意の有限表示群を含むランダム群のモデルなので、この研究成果は非常に広い枠組みの下で(ある意味で)一般的な群が、強い固定点性質をもつことを主張していることになる。この点がこの成果の興味深い点であるとともに、重要な意義を与えている
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