2010 Fiscal Year Annual Research Report
離散観測に基づく確率微分方程式の統計推測理論とその応用
Project/Area Number |
21540126
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
内田 雅之 大阪大学, 基礎工学研究科, 教授 (70280526)
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Keywords | 高頻度データ / 確率微分方程式 / 最尤型推定量 / モーメント収束 / 大偏差不等式 |
Research Abstract |
確率微分方程式によって定義される拡散過程に従う高頻度でかつ長期間観測されたデータを用いて、ドリフトパラメータとボラティリティパラメータを推定する問題は、セミマルチンゲールの統計推測において根幹をなす問題である。今年度はエルゴード的拡散過程モデルに対して、効率よく未知パラメータを推定するための統計的手法の開発及びそれから得られる推定量の漸近的性質について研究した。具体的には、次のように未知パラメータのアダプティブな最尤型推定量を導出した。1,オイラー・丸山近似(E-M近似)に基づく近似尤度関数とデータの刻み幅に依存して伊藤・テイラー展開(I-T展開)された近似尤度関数を構成する。2,E-M近似に基づく近似尤度関数を用いて初期最尤型ボラティリティ推定量を求める。3,I-T展開に基づく近似尤度関数と初期最尤型ボラティリティ推定量を用いて、アダプティブな最尤型ドリフト推定量を算出する。4,さらに、I-T展開に基づく近似尤度関数とアダプティブな最尤型ドリフト推定量を用いてアダプティブな最尤型ボラティリティ推定量を導出する。5,I-T展開に基づく近似尤度関数の精度に応じて、3,と4,を繰り返す。この手順で導出されたアダプティブな最尤型推定量が正則条件の下で、漸近正規性及びモーメント収束性をもつことを統計的確率場の大偏差不等式を用いて示した。さらに、シミュレーション結果から、従来のドリフトパラメータとボラティリティパラメータの同時最尤型推定量に比べて、提案したアダプティブな最尤型推定量は数値的に格段によいパフォーマンスをもつことがわかった。本研究において、提案した推定量のモーメントの収束が証明できたことから、アダプティブな最尤型推定量を用いた拡散過程の統計的モデリングやモデル評価規準の構成及びその数学的正当性の証明が期待される
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