2011 Fiscal Year Annual Research Report
感染症伝染ダイナミクスの離散時間モデルの数理的構造に関する研究
Project/Area Number |
21540130
|
Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
瀬野 裕美 広島大学, 大学院・理学研究科, 准教授 (50221338)
|
Keywords | 数理生物学 / 数理モデル / モデル化 / 差分方程式 / 感染症 / 生態学 / 応用数学 / 公衆衛生学 |
Research Abstract |
本研究では,感染症の伝染ダイナミクスに関する新しい非線形差分方程式系による離散時間モデルの構成とその数理的解析を体系的に行い,その構造(関数形etc.)の合理性[生物現象の構造との論理的な整合性]について体系的に考察することにより,近年,数理生物学の分野として発展著しい,感染症の伝染ダイナミクスに関する数理モデル研究に新しいモデリングのための数理的基盤を提供することを目指している。感染症の伝染ダイナミクスに関しては,離散時間モデルの合理的構造に関する研究は未だ希有である。 本研究では,感染症の伝染ダイナミクスの基本モデルとして幅広い応用の基礎になっている常微分方程式系によるKermack-McKendrickモデルを基とする連続時間モデルに対して,確率過程を応用した数理モデリングの手法を用いて,新しい非線形差分方程式系による数理モデルを構成し,その数学的な性質の基本的な解析を行った。常微分方程式系による連続時間モデルにおける数理モデリングと同じ個体間相互作用に関する仮定の下に,本研究による数理モデリングの手法で構成された離散時間モデルは,対応する連続時間モデルとは独立に構成されているが,数理的に重要な力学的性質については,高い定性的対応性("dynamical consistency")をもつ結果が得られた。 さらに,本研究の数理モデリングにより自然に定義される感染個体の期待再生産数に関する基本的な結果をまとめた。感染症伝染の社会的重篤度を計る重要な指標として扱われてきた基本再生産数については,連続時間ダイナミクスモデルに関して多くの数理的な研究がなされてきたが,本研究で定義されるより一般的な再生産数の数理的特性を詳細に調べることにより,感染症の伝染ダイナミクスの進行に伴うどの時点でどのような対策が感染症伝染の沈静化に効果的・効率的であるかについての理論的な議論も可能である。
|
Research Products
(7 results)