2011 Fiscal Year Annual Research Report
集団遺伝学における様々な確率モデルの確率過程論的研究
Project/Area Number |
21540143
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Research Institution | Kyushu Dental College |
Principal Investigator |
飯塚 勝 九州歯科大学, 歯学部, 准教授 (20202830)
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Keywords | 集団遺伝学 / 確率モデル / モランモデル / 突然変異 / 自然淘汰の互助的相互作用 / 分子進化 / 確率過程 / 出生死滅過程 |
Research Abstract |
以下の2つのテーマに関する研究を行った。 集団遺伝学に現れる二倍体生物集団における自然淘汰の互助的相互作用(2つの遺伝子座、もしくは、2つのDNAやRNA塩基座位を考え、どちらか一方に突然変異が生じると有害だが、2つの突然変異が共存すると、有害性が消失する座位間相互作用)による分子進化の確率モデルに関して以下の研究を行った。このモデルのでは復帰突然変異の効果が存在する場合と存在しない場合がこれまでの研究では解析されてきたが、2つの場合の関係が明確になっていなかった。今年度は、復帰突然変異が存在しないモデルは復帰突然変異が存在するモデルの近似であるとの認識から、この近似が成り立つ十分条件を明らかにした。さらに、コンピュータ・シミュレーションを用いて、突然変異率と集団の大きさ(個体数)の積が0.1以下であれば、2つのモデルにおける自然淘汰の互助的相互作用による分子進化の速度のモデル・パラメータ依存性が定性的に同様であることを示した。一方、この条件が満たされていない場合には、分子進化速度のモデル・パラメータ依存性が2つのモデルで著しく異なり、どちらのモデルを用いるかに注意が必要であることがわかった。また、自然淘汰の様式と復帰突然変異の有無で分類した10個のモデルに対して、実験的研究や遺伝情報分子(DNAやRNA)の塩基配列比較より得られるデータを用いて、一方の座位にのみ生じた突然変異の有害度を推定するための理論の構築と解析のためのコンピュータ・プログラムの作成を行った。 集団遺伝学における基本的な確率モデルの一つである連続時間モランモデルを含む出生死滅過程に対して、前年度までに得られた結果をドイツのボン大学で開催された確率過程論に関する国際会議で発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
集団遺伝学に現れる二倍体生物集団における自然淘汰の互助的相互作用による分子進化の確率モデルの研究についてもモランモデルの研究についても、今年度までの結果を踏まえて最終的な結果が得られる段階に到達している。
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Strategy for Future Research Activity |
集団遺伝学に現れる二倍体生物集団における自然淘汰の互助的相互作用による分子進化の確率モデルに関しては、今年度に完成した手法を用いて一方の座位にのみ生じた突然変異の有害度を推定する。その結果とこれまでに得られた結果を統合して学術論文を完成する。 一方、モランモデルの研究では、いろいろな弱突然変異極限での極限過程の存在の証明と極限の同定を行い、それらの結果を拡散モデルの弱突然変異極限と比較する。
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