2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21540146
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
大矢 雅則 東京理科大学, 理工学部, 教授 (90112896)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
入山 聖史 東京理科大学, 理工学部, 講師 (10385528)
浅野 真誠 東京理科大学, 理工学部, 研究員 (80408707)
松岡 隆志 諏訪東京理科大学, 経営情報学部, 教授 (90328568)
原 利英 東京理科大学, 理工学部, 助教 (30579769)
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Project Period (FY) |
2009-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 数学基礎論 / 量子情報 / 量子エントロピー / 量子アルゴリズム / 量子確率論 |
Research Abstract |
本研究の目的は、いくつかの具体的な問題を通して量子(非可換)確率論の基礎を検討することにある。現在の量子情報に関わる様々な理論は量子確率論をベースにしているが、そこに存在するいくつかの問題点を明らかにし、その解決を試みる。そこで、本研究では以下の順に研究を遂行する。(1)量子情報理論、特に、量子エントロピー論、量子テレポーテーション理論、量子アルゴリズム論に存在するいくつかの問題点を取り上げ、それらを整理する。 (2)(1)で掲げた問題はどこまで従来の量子確率論の公理系で議論できるであろうか? (3)(2)の検討の下に、量子確率論の新たな数理を考える。上記の目的に基づき,本年度は以下のような研究成果を得た.(i)量子テレポーテーションの新しいスキームの提示とその解析,(ii)量子チューリング機械の定式化と量子計算の複雑さの定義,(iii)リフティング写像を用いた量子相互エントロピーの定式化,(iv)エントロピー進化率を用いたインフルエンザウイルスの分類,(v)合成量子パイこね変換についてのカオス尺度を用いた特徴付け. また,これらの研究成果の発表を数多く行った.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
(1)量子情報理論、特に、量子エントロピー論、量子テレポーテーション理論、量子アルゴリズム論に存在するいくつかの問題点を取り上げ、それらを整理する。 これらは、概ね当初の予定どおり進行している。 (2)(1)で掲げた問題はどこまで従来の量子確率論の公理系で議論できるであろうか? これらについて、Khrennikovらと多くの議論を行い、いくつかの論文にまとめ、発表した。 (3)(2)の検討の下に、量子確率論の新たな数理を考える。 新しい数理とその応用について、従来のKormogorov確率論の範疇にない現象について、研究代表者による適応力学を用いて、新しい数理を構成した。結果をいくつかの論文にまとめて発表した。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)量子入力・量子出力系における情報理論の構成。本年度は量子入力―量子出力の情報の流れの解析を考察するために、まず近年ShorやDevetakらによって通信路容量の標識を求める際に採用されてきたcoherent informationについて性質を調べる。この量は極限操作の後に伝送容量と一致するが、極限操作に関する近似精度の研究がなされていないため、実用的でないという問題がある。本研究項目では、研究代表者により、すでに1980年代に提案されていた量子相互エントロピーによる検討を行うことで、上記問題点を検討する。研究分担者である渡邉は、具体的な通信路に関する容量計算の具体例を求め、どのような場合に非整合的値をとるかについて検討し、23年度以降の研究への指針とする。(2)量子エンタングルド状態に関する研究。本年度は,全体の研究に関する基礎的な問題の整理をまず行い,準備的研究の発展を中心として研究を進めてゆく.より具体的には,目的の項で述べたように,次元が におけるエンタングルドあるいは分離状態の判定条件を見いだすことを試みる。この低次元の場合は計算機を用いて遂行することが可能である。 (3)量子情報通信過程に関する研究。様々なエンタングルド状態を用いたテレポーテーション過程の分類という目的のために、無限次元Hilbert空間におけるテレポーテーション過程の定式化を試みる。(4)量子アルゴリズムに関する研究。本年度は、量子チューリング機械における遷移に相当する量子チャネルの定式化を行い、計算過程のチャネル表現を基礎とした計算量の定義を試みる。また、チャネルの性質により量子チューリング機械のクラス分類を行い、各クラス間の相関や、計算の複雑さについての考察を行う。
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