2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21540174
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
木坂 正史 京都大学, 人間・環境学研究科(研究院), 准教授 (70244671)
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Project Period (FY) |
2009-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 超越整関数 / 多項式 / Fatou集合 / Julia集合 |
Research Abstract |
本研究では多項式と超越整関数,両者の力学系的性質を個別に研究すると同時に,双方向的研究,即ち多項式の結果から超越整関数の結果を得ること,更にはその逆に,超越整関数に関する結果から多項式に関する結果を導くことを目指している.連携研究者の協力の下,本年度得た主な成果は次のとおりである: (I)超越整関数の力学系について・Fatou集合が非有界成分を持つときにはJulia集合が局所連結にならない,という結果に対する別証明を与えた. ・Julia集合がSierpinskiカーペット(即ち,連結,局所連結,全疎な閉集合であって補集合の境界が互いに素なJordan閉曲線であるようなもの)になるための十分条件を与え,更にその条件を満たすような超越整関数でいくらでも遅い増大度を持つようなものを擬等角手術の方法によって構成した. (II)多項式の力学系の研究とその超越整関数の力学系への応用,またその逆(双方向的研究)について・parabolic renormalizationの応用として,2次多項式族のMandelbrot集合についてサテライト型で無限回くりこみ可能なパラメータで,ある条件を満たすようなものに対してはその点においてMandelbrot集合は局所連結になることを証明した. ・Baker領域を持つ超越整関数が多項式列で複素平面上で広義一様に近似されているとき,もしその多項式のJulia集合が連結ならば,多項式の無限遠点の吸引領域はBaker領域に核収束しないことを示し,またこの現象を具体例で考察した. ・2次の反正則写像族のパラメーター空間で,Mandelbrot集合と同様に定義されるTricornに多数見られる所謂Tricorn-like setについて,あるものは実際にはTricornと同相にはならないことをumbilical cordが1点に収束しないことを示すことにより証明した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
超越整関数の力学系,多項式の力学系の双方について少しずつではあるが着実に結果が出つつある.ただ双方向的研究の部分については,特に超越整関数の結果から多項式の結果を得るという方向について,当初から予想はしていたが目立った結果が得られていないのが現状である.
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Strategy for Future Research Activity |
基本的には連携研究者と共に超越整関数,多項式それぞれの力学系についての研究を進める.ただし双方向的研究の部分では特に超越整関数の結果から多項式の結果を得るという方向について,当初予想はしていたがなかなか難しく目立った結果は得られていない.得られた結果の応用の方向として例えば複素力学系の結果から実力学系,または高次元力学系を導くことも検討してみたい.
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