2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21540176
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
上田 哲生 京都大学, 大学院・理学研究科, 教授 (10127053)
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Keywords | 複素力学系 / 分岐点 / ファトゥ集合 / 放物型分岐点 / インプロージョン |
Research Abstract |
一般次元の複素力学系の諸問題を,主として多変数複素解析学の立場から解明することを目的として研究を行った.特に,複素数空間や複素射影空間からそれら自身への正則写像を繰り返し合成することから生ずる力学系の大域的構造を,その分岐点の軌道を通して解明すること,および不動点の近傍における写像の局所的構造とその摂動を解明することの両者を関連づけながら研究を進めた. 第一の主題は射影空間の上の正則写像から生ずる力学系の問題についてである.このような写像は分岐点をもつ被覆写像と見なすことができるが,写像の分岐点の合成写像による軌道を調べることによって,写像が安定な挙動を示す点からなるファトゥ集合の性質とカオス的な挙動を示すジュリア集合,またそれと密接に関連する反発周期点の分布を調べた.これをさらに一般化して,分岐点軌道が代数的で超吸引的周期点を含む場合にも理論を拡張することを試みた.さらに分岐点軌道が全空間とならない場合においてもこれがどう一般化しうるかを考察した.第二の目的である高次元正則写像の半放物型不動点の構造と,その摂動から生ずる周期点の分布に関する局所理論に関しては,Bedford,Smillieらとともに共同研究を進めた.不動点における写像の固有値のひとつが1である半放物型不動点の構造の内在的な特徴づけを与えるために,その点の近傍でファトゥ座標を定め,摂動された写像をファトウ座標の間の写像で近似することによって,ジュリア集合や充填ジュリア集合の不連続性(インプロージョン)の現象を説明することを試みた.この研究は,ほぼ完成に近付いている.
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Research Products
(1 results)