2011 Fiscal Year Annual Research Report
タイヒミュラー空間及びクライン群の変形空間の複素解析的構造の研究
Project/Area Number |
21540177
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
宮地 秀樹 大阪大学, 大学院・理学研究科, 准教授 (40385480)
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Keywords | タイヒミュラー空間 / タイヒミュラー距離 / 極値的長さ / 写像類群 / ホロ関数境界 / グロモフ積 |
Research Abstract |
タイヒミュラー空間の複素構造による小林距離はタイヒミュラー距離と一致すること,及び,S.Kerckhoffによるタイヒミュラー距離の極値的長さの比による表示から,極値的長さを用いてタイヒミュラー距離を研究し,複素構造を研究することが考えられる.F.GardinerとH.Masurによるコンパクト化は,Thurston理論における極値的長さに関するタイヒミュラー空間の完備化であるため,純粋な位相不変量による展開されるThurston理論と複素構造による幾何との関連を解明することも期待する. この立場から,昨年度に引き続きGardiner-Masur境界及び極値的長さの研究を行った.LiuとSuによればGardiner-Masur境界はタイヒミュラー距離に関するホロ関数境界と一致するが,まずBusemann点ではない点が存在することを示した.これよりタイヒミュラー空間はCAT(0)空間ではないというH.Masurによる定理の別証明を得た.Thurston理論との関係を見るため,極値的長さに関する交点数函数を定義し,交点数函数に関する幾何を展開した.具体的には,基点を固定し,タイヒミュラー空間内の2点の交点数を,ネイピア数をグロモフ積の2倍乗して得られる数と定義すると,コンパクト化全体に連続拡張することを得た.この結果と昨年度に得られた一意エルゴード点の特徴付けを用いることにより,例外を除き,タイヒミュラー空間の等長写像群の作用が拡張された写像類群の作用と一致することを示した.これから正則自己同型群が写像類群と自然に同型であることも従う.この事実はH.Royden, C.Earle, I.Kra, V.Markovic, N.Ivanovにより既に示されていたが,我々の議論では漸近挙動を詳細に研究するため,連続とは限らないより一般的な写像の境界値の特徴付けに成功している.さらに,極値的長さを測度付き測地線層の方向の微分公式を得た.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
位相幾何学的な側面からのタイヒミュラー空間の複素構造の研究に対するアプローチとする研究環境は整い来つつあると思われる.位相幾何学的側面と複素解析的側面との関係を与える結果として,正則自己同型群と写像類群との関係を得た.そのため,概ね順調に進展しているとした.
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Strategy for Future Research Activity |
今後は研究推進方策として,タイヒミュラー空間の複素構造と関連する双曲三次元多様体の変形理論からの側面の研究を強化する.また,極値的長さによる境界を用いたタイヒミュラー空間の複素構造の解明にも適進する.
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