2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21540187
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
伊藤 宏 愛媛大学, 理工学研究科, 教授 (90243005)
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Keywords | ディラック作用素 / レゾナンス / シュレーディンガー作用素 / 非相対論的極限 / 相対論的シュレディンガー作用素 / スペクトル / 固有値 |
Research Abstract |
研究代表者(伊藤宏)と連携研究者(山田修宣)の共同研究の結果に関して説明する。 1.前年度に次の結果が得られていた:(ある種の解析性のある)遠方で+∞になる電場ポテンシャルV(x)をもつディラック作用素のスペクトルは(大まかに言うと)絶対連続スペクトルのみからなり実軸全体を占める。一方,同じポテンシャルをもつシュレーディンガー作用素のスペクトルは離散スペクトルのみからなる。このように,両者のスペクトル構造はまったく異なっているが,光速cを無限にするという非相対論的極限において,ディラック作用素の正の高エネルギー領域(~mc^2)におけるレゾナンスは同じポテンシャルをもつシュレーディンガー作用素の固有値に近づく。 2.22年度に考察した問題:負の高エネルギー領域(~-mc^2)および有界なエネルギー領域においてレゾナンスが存在するのか?また,非相対論的極限におけるレゾナンスの挙動をどうか? 3.22年度に得られた結果: (1)遠方で-∞になるポテンシャル-V(x)をもつシュレーディンガー作用素は,ポテンシャルの増大度により,自己共役拡張が一意的ではない。しかし,そのレゾナンスをその自己共役拡張によらず定義できることを示し,さらに,負の高エネルギー領域においては,ディラック作用素のレゾナンスは,そのシュレーディンガー作用素のレゾナンスに非相対論的極限では近づくことを示した。 (2)有界なエネルギー領域においては,光速が十分大きい場合にはレゾナンスは存在しないことを示した。 (3)具体的なポテンシャルの場合に,レゾナンスの並び方はポテンシャルの増大度に依存することを示した。
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