Research Abstract |
ランダム行列と自由エントロピーを基礎に自由確率論の研究を行うとともに,関連して,行列解析,作用素論,量子情報理論について研究した.平成22年度の成果は以下の通りである. 1.日合・宮本は,自由エントロピーの手法を応用して,連続と離散の両方の複合系上のポテンシャル関数に対して,置換の成す離散マイクロ状態を使った相互圧力関数の新しい概念を導入し,通常の圧力関数と相互情報量との関係を示した. 2.安藤・日合は,(0,∞)上の作用素対数凸関数の概念を導入し,それが作用素単調減少関数と同値であることを示し,さらに,それと同値な作用素平均と関連するいくつかの性質を与えた.作用素対数凹関数についても同様に考察した. 3.Mosonyi・日合は,量子α-相対エントロピーが一般化されたカットオフ・レイトで表されることを示し,量子α-相対エントロピーの直接的な操作的解釈を与えた.α-相対エントロピーによって定義されるHolevo容量のいくつかの一般化が一致することを示し,これらの容量を用いて古典-量子通信路の1ショットε-容量の上界を与えた. 4.日合・佐野は,(0,∞)上の関数に対する行列凸性と行列単調性をLoewner行列の条件付き負定値性と条件付き正定値性により特徴付けた.有限区間(a,b)上の行列単調関数についても同様な特徴づけを与えた. 5.Bourin・日合は,半正定値行列の(ユニタリ不変)対称ノルムに関するいくつかの劣加法性を示すとともに,反ノルムの概念を用いて,Minkowskiの行列式不等式の拡張である優加法性を示した.
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