Research Abstract |
今年度の成果は主に3つある. 1.周期箱玉系の分配関数として,角転送行列のエネルギーの母関数を導入した.ソリトンの数が指定された等位集合上にわたる部分和が,フェルミオン的な構造を反映するq2項係数の積という明示式を持つ事を組合せ論的な手法により証明した.この結果はq=0でのベーテ根の個数に関する既知の結果をq類似に拡張するものである. 2.T-systemとY-systemについて,研究代表者らの成果をはじめ凡そその誕生から2011年に至るまでの殆どの結果,様相を146pageの総合報告にまとめた.主な内容は,可解格子模型の転送行列,頂点模型とRSOS模型,量子群の表現論,q指標とT-system,クラスター代数に依る定式化,周期性予想の解決,ダイロガリズム和公式の証明,ヤコビ・トゥルーディー型公式,タブロー和表示,解析的ベーテ仮説,ロンスキー型解,常微分方程式におけるT-system,ストリング・ゲージ理論への応用,古典可積分系としての様相,Q-systemとフェルミ公式,Y-systemと熱力学的ベーテ仮説,RSOS模型の熱力学的ベーテ仮説による解析,T-systemの応用などである. 3.量子群の結晶基底,組合せR,パスと一次元状態和,フェルミ公式,超離散タウ関数,ソリトン・セルオートマトン,組合せベーテ仮説,周期箱玉系等に関して,ここ20年ほどの研究成果を専門書(和書約200ページ)にまとめた.量子可積分系の最も汎用性のある解法として知らせるベーテ仮説であるが,それが組合せ論的な設定においても非自明な類似を持ち,近年の数理物理の多くの問題と結びつくことは,一部の専門家以外では殆ど認識されていない.本書はこの状況を大きく改善するもので,学部の量子力学で習う角運動量やスピンの合成程度の予備知識だけから出発して,ベーテ仮説や角転送行列の組合せ論的側面,応用を多くの具体例に沿って易しく解説した.近日刊行予定.
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