2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21540213
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Research Institution | Ochanomizu University |
Principal Investigator |
吉田 裕亮 お茶の水女子大学, 大学院・人間文化創成科学研究科, 教授 (10220667)
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Keywords | 関数解析学 / 作用素環論 / 非可換確率論 / 変形分布 / 分割統計 |
Research Abstract |
通常の確率論の場合,乗法的合成積は非常に自明であるが,非可換確率空間の場合,乗法的合成積は真に非可換性が反映されたリッチな議論が可能な世界である.Dykema氏により乗法的半不変量の組み合わせ論的な考察がなされ,「絡み有り非交叉分割」が重要な役割りを果たすことが導かれた.研究代表者はこの「絡み有り非交叉分割」が自由確率論において無限分解可能な分布の多くを包括するMeixnerタイプの分布に密接に関連することを以前に指摘した.本研究課題の平成22年度においては,q-変形対称Fock空間上のq-2重生成作用素とq-2重消滅作用素を用いて,自己共役なq-変形Meixner分布を持つ非可換確率変数の構成に成功した.このMeixner分布のq-変形は,今まで知られていた「絡み有り分割」の交叉数のq-数え上げを行うことにより得られるq-Meixner型作用素とは異なり変形パラメータがqではなくq^2で与えられることになることが導かれた.この成果は既に学術雑誌のオンライン版として公開されている(平成23年度中に学術雑誌で印刷としても公開される).また,平成22年度には,自由確率論における乗法的合成積のある種のスケーリング極限(乗法的中心極限に相当する)に関する共同研究を行い,その極限分布のS-変換がLambert関数を用いて表現できることを得た.このような分布は,その存在が今まで述べられてはいたが,具体的に極限分布として構成されたのは初めてである.この成果に関しては平成22年度末現在,投稿に向けての最終調整を行っている.さらに平成22年4月には,自由確率空間におけるフィッシャー情報量距離に関する研究論文が学術雑誌で印刷公開された.これはMeixnerクラスの確率分布はFisher情報量から見て特徴的な分布であり,幾つかの分布のFisher情報量による特徴付けも知られているために研究を行ったものである.
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