2012 Fiscal Year Annual Research Report
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21540213
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Research Institution | Ochanomizu University |
Principal Investigator |
吉田 裕亮 お茶の水女子大学, 大学院人間文化創成科学研究科, 教授 (10220667)
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Project Period (FY) |
2009-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 関数解析学 / 作用素環論 / 非可換確率論 / 変形分布 / 量子情報理論 |
Research Abstract |
本研究の目的は、非可換確率空間上での確率分布の変形ならびに確率分布に付随して導入されるエントロピーならびに各種情報量の変形を主たる課題としている。昨年度からは確率分布に付随して導入される Fisher 情報量ならびにエントロピーに関する調査を開始した。平成24年度においてまずは、研究期間を3ケ月延長し取り纏めを行った相対エントロピーの相対 Fisher 情報量による積分表示の研究成果の学術雑誌への投稿を行なった。当該論文は査読の結果、既に、学術雑誌Entropy に掲載され公開されている。さらに、本年度は相対エントロピーと関連の深い確率分布間の距離のひとつである Wasserstein 距離の自由確率論での振舞いについて調査を行った。特に、相対自由エントロピーの相対自由 Fisher 情報量による積分表示を用いることにより自由確率論における Talagrandの不等式の新たな証明が得られることが明らかになった。この研究成果の一部は、初秋に、ポーランド科学アカデミー主催の国際シンポジュウムで発表を行った。また、この成果に関しては拡張の可能性があることが分かり、一般の輸送コスト不等式に向けて、自由確率論における確率過程の時間微分公式を調査研究中である。 またさらに、平成24年度には, 自由確率論における乗法的合成積の乗法的中心極限に相当する、ある種のスケーリング極限に関する共同研究も行なった。その極限分布のS-変換が Lambert 関数を用いて表現できることを明らかにした。このような分布は, その存在は今までにも知られてはいたが、具体的な極限分布として構成されたのは当該研究が初めてである。この極限分布に関する研究成果は取り纏めを行い、既に、学術雑誌への投稿も終えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の計画では、非可換確率空間上での作用素の変形に基づき、確率分布の変形を行い、またその変形と両立するような、分布に付随する Fisher 情報量およびエントロピーの変形に関する調査を行うことを目的としていたが、平成24年度からは、これら付随量間の汎関数不等式を調査することにより、直接に、これら情報量の直接的な変形手法が開発される可能性が得られたことは、当初計画を上回る進捗と判断される。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究課題の推進に関して、自由確率論における輸送コスト不等式の一般化には関数解析のみならず確率過程の知見も重要になってくる。これらの関連研究者との研究討議ならびに研究動向の調査を行いながら推進する。また、また、2013年7月にカナダFields研究所で開催される国際シンポジュウムで当該研究の成果を発表予定である。このような国際会議で海外の著名な関連研究者と直接に研究討議を行うことができる重要な機会でもあり、このような国際会議のためにも科研費を活用したい。
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