2011 Fiscal Year Annual Research Report
無限遠の幾何とラプラシアンのスペクトル・散乱・逆問題
Project/Area Number |
21540215
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
久村 裕憲 静岡大学, 理学部, 准教授 (30283336)
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Keywords | ラプラス-ベルトラミ作用素 / 固有値の非存在 / 絶対連続性 / リーマン部分多様体 / 平均曲率 |
Research Abstract |
研究の当初は,無限遠での曲率の振舞いとラプラス・ベルトラミ作用素の一般固有関数展開の問題を考察するのが目的であったが,固有値の非存在と極限吸収原理が,曲率というよりは,むしろ,リーマン測度の増大度にのみ関係するというやや意外な結果が分かってしまい,それに伴い,研究を全面的に書き換えることなった.また,新たに部分多様体の問題にも研究を着手したので,23年度に得られた結果は以下の3つである. 1.考えるリーマン多様体が,放射的座標を持つエンドを少なくとも1つ持つとき,drift Laplacianが埋め込まれた固有値を持たないようなシャープなリーマン測度増大度を決定した.また,それがシャープであることを示す例を構成した.この結果はプレプリント・サーバーに投稿済みである. 2.上述の1の結果に伴い,極限吸収原理もリーマン測度の増大度のみが関係することが新たに判明した.得られた結果は,有限個のエンドを持つリーマン多様体の各エンドで測度の増大度がゼロ以上の定数にそれぞれ距離関数の-1乗より速く収束するとき極限吸収原理が成り立ち,その結果ラプラシアンが絶対連続になることを示した.この結果もプレプリント・サーバーに投稿済みである. 3.ノン・コンパクト完備リーマン部分多様体は,平均曲率が十分小さく(例えば極小ならば),また,リッチ曲率の下限が遠方で極度にマイナス無限大に発散するようなことがない限り,ターゲットのシリンダー状の領域を脱出しなければならないが,その具体的な数値を求めた.この結果は現在投稿中である.
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