2012 Fiscal Year Annual Research Report
微分方程式の力学系的研究における幾何学的および位相的方法の研究
Project/Area Number |
21540221
|
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
新居 俊作 九州大学, 数理(科)学研究科(研究院), 准教授 (50282421)
|
Project Period (FY) |
2009-04-01 – 2014-03-31
|
Keywords | Stability Index / 位相的方法 / 分岐 / 相転移 |
Research Abstract |
(1)作用素のH_2理論: 元々オリジナルの有限次元 Stability Index は、最初に無限区間(-∞,+∞)で定義された作用素に対して構成された後、境界条件をもつ有限区間及び周期境界条件を持つ作用素にその対象が拡張された。本研究の出発点となる無限次元 Stability Index は、最初に無限帯状領域 (-∞, +∞)×Ω (但しΩは有界領域)及び有界星状領域で定義された作用素に対して構成したが、この Index の有限次元におけるものと同様の対象への拡張を探った。また、具体的な方程式においてもこの Stability Index の応用の可能性を検討した。 (2)幾何学的手法による分岐解析: 申請者によって解析された典型的な分岐現象に類似した分岐を起こす具体例の幾何学的特徴の数学的定式化を目指し、そこから一般論の構築の方向性を探った。すなわち、様々な具体例においてどのように分岐が起きるかの知見の蓄積が進んだ。 (3)相転移現象の幾何学的起源: 相転移の問題はこれまで主に解析的な手法を用いて研究されて来たが、最近になってこの問題を幾何学的な視点から捉え直す試みが始まっている。そのなかで熱力学的量の発散や不連続性の起源とされている、与えられたポテンシャルに対する相空間内の等エネルギー曲面の幾何学的性質の「大きな」変化の数学的に具体的に定式化の方向性を探った。この問題は、初期の段階にあり様々なアイディアが試された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(1)作用素のH_2理論:一次元反応拡散系の進行波や一次元 Schroedinger 方程式の孤立波解の安定性解析等への応用及び理論的拡張において、申請者の業績も含めて成功を収めている Stability Index の理論の、申請者によって行われた無限次元化の理論面における更なる展開と、具体的な無限次元力学系に対する応用。 (2)幾何学的手法による分岐解析:スタンダードな解析手法が容易には適用出来ないような非線形微分方程式の分岐問題について、系の持つ幾何学的な構造に基づいた新しい分岐理論の構築。 (3)相転移現象の幾何学的起源:これまで解析的手法で研究されてきた相転移現象について、幾何学的、位相的な視点からその数学的構造を明らかにする。 上記いずれにおいても、知見やアイディアの蓄積が順調に進んでいる。
|
Strategy for Future Research Activity |
(1)作用素のH_2理論:具体例に関して、反応拡散方程式等に限らず、多粒子系の凝集問題に関わる Fokker-Planck 方程式等もその対象としてゆく。 (2)幾何学的手法による分岐解析:スタンダードな解析手法が容易には適用出来ないような非線形微分方程式で、典型的な分岐現象に類似した分岐を起こす物の例を更に集めその幾何学的な構造の共通性を探る。 (3)相転移現象の幾何学的起源:与えられたポテンシャルに対する相空間内の等エネルギー曲面の幾何学的性質の「大きな」変化の数学的に具体的に定式化の方向として、Persistent Homology 等の活用を考える。また、複雑ネットワークにおいてみられる相転移現象についても、その幾何学的な解釈を与える定式化の方法を探る。
|